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「誕生日がどうかしたの?」

「どうかって、恵理子…
義父の俺が、娘の陽より年下だったら、なんか嫌じゃないか。」

同い年のくせにつまらないことを考える樹に、笑みが零れた。



「あ、そうだ!樹はこの子が産まれたら、『じいじ』になるんだよ。」

「えーーーっ!」

樹の驚きように、私も陽も大笑いだ。



(20代で『じいじ』はあまりに可哀想よね。)



そんなことを思ってたら、なんだか急に気分が悪くなって来て…



「恵理子…どうかした?」

「ちょっと……」

私は部屋を出て、トイレに駆け込んだ。



もしかしたら、苦手なイカを無理して食べたせいかもしれない。



「大丈夫だった?まだ顔色が悪いよ。」

「大丈夫よ。多分、イカだと思う。」

「今日は樹に泊まってもらったら?」

「もう大丈夫だってば。」

「いや、今日は泊まる!」

「もうっ!嬉しそうな顔しちゃって。」

冷やかされた樹は、Vサインを出しておどける。



結局、樹はうちに泊まることになった。
なんだか照れ臭くて、帰り道は口数が少なくなった。



「どうした?まだ気分が悪い?」

「ううん、もう大丈夫。」

一言話しては沈黙が流れる。
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