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私達は、職場近くのイタリアンのお店に向かった。
樹がその店の個室を予約してくれていた。
小洒落たお店だった。
私は初めてだったけど、樹と陽は一緒に来たことがあるんじゃないかな。
なんとなくそんな気がした。



「雰囲気の良いお店ね。」

「ここだと落ち着いて話が出来るから。」

今日は皆、口数が少ない。
料理が運ばれて来ると、皆、黙ってそれらに手を付けた。



「陽…ごめん。」

小さな声で、樹が呟いた。
陽は何も答えない。
部屋は重苦しい空気に包まれた。



「恵理子さん、今日はどうして?」

「え…そ、それは…」

どう言おう?
本当のことを話した方が良いのか…



「俺が好きなの、実は、恵理子なんだ。
でも、恵理子は俺の想いに応えてくれなかった。
だから、君と付き合おうとした。
恵理子のことを忘れるために。」

樹は自分だけ悪者になろうとしている。
そんなことさせられない。
でも、本当のことを話したら、陽は今以上に傷付くんじゃないだろうか。



(どうすれば良いの?)



焦っている時、不意に陽が笑い声を上げた。
どこか狂気じみた甲高い笑い声を。
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