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「最初に決めたよな?
三ヶ月、陽と付き合って、それでも心変わりしなかったら、俺と結婚するって。
俺は、心変わりしなかった。
だから、俺は恵理子と結婚するんだ。
今更、しないなんてないからな。
約束したから、俺は陽と付き合ったんだから。」

おかしい。
あまりにも話が噛み合わない。



「陽さんにはまだ話してないの?」

「付き合いは今日で終わりだとは言った。
詳しいことは、後日話すって。」

陽はそんなことは言ってなかった。
子供も出来たことだし、別れるはずなんてない。



「それで、陽さんはどう言ったの?」

「……私は別れないって。」

そうだろうな。
陽は樹の話を冗談だとでも思ってるのか、或いは今、樹が言ったことがすべて嘘なのか。
私には、判断が付かなかった。



「明日、恵理子も来てよ。
で、俺達のことを話そう。」

「だ、だめよ、そんなことしたら…」

「言いふらされたら、二人で仕事をやめよう。
また違う仕事を探せば良い。」

「やめるって…樹はここでの仕事が好きだって言ってたじゃない。
だからこそ、頑張って、トレーナーになったんでしょう?」

「あぁ、そうだ。
仕事は好きだし、やめたくはないよ。
でも、仕事以上に恵理子のことが好きだから。
恵理子が辛い想いをするのなら、やめて構わない。」

樹はきっぱりとそう言い切った。
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