Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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098. ほんの少しの寂しさと

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「フランク、わかっているな。」

「ご安心下さい、父上。
マクシミリアンに悟られるようなへまは致しません。」

父は、私のその言葉に満足げに頷いた。



私は部屋に戻ると、大きな姿見に映る自分の姿をみつめた。
身長は5フィート6インチ(約168cm)、細身の身体に長い手足、短く刈り込んだ栗色の髪は緩くウェーブがかかっている。
男にしては背は高いとは言えないが、この私のことを女だと思う者はまずいない。
私自身も、自分のことを女性だとは思ってはいない。
いや、そう思ってはいけないのだ。

16年前、私は双子の片割れとしてこの世に生を受けた。
もう一人は男の子だった。
その者こそがフランクだ。
私の父は、フランクの誕生をそれはそれはたいそう喜んだ。
カステレード家は代々、不思議な程に男子が誕生せず、養子によってその家督を繋いで来た。
そんな中、ついに直系の後継ぎが出来たのだ。
父が喜ぶのも当然のことだろう。
私は、親戚の所へ養子に出されることになっていたらしい。
フランクさえいれば、私などいらなかったのだろう。
ところが、運命とは皮肉なもので、次の日、待望の後継ぎだった彼は、突然、息を引き取った。
母は、父を悲しませたくない一心で、そのことを隠したのだそうだ。
父には、私のことをフランクだと思いこませた。
しかし、そんなことがいつまでも隠し通せる道理はない。
真実を知った父の悲しみはとても深く、一時は頭がおかしくなるのではないかと思った程だったらしい。
いや、きっと父はその時からおかしくなっていたのだろう。
父は、すべてを知ってからも私のことをフランクと呼んだ。
母が付けたフランソワという名前ではなく「フランク」と呼んだのだ。
私に与えられたのは、男の子の服。
髪の毛はいつも短く刈りこまれ、剣の扱いや馬の乗り方を教わった。
私をとり上げた乳母には、一生食べて行けるほどの多額の金を渡して暇を取らせたそうだ。
私が10歳の時に事故で母が亡くなり、それからは私が女だということを知るのは、父と私だけになってしまった。

しかし、これから先、私が大人になっていけば、父は私のこの声をどうするつもりなのだろう?
いつまでもボーイソプラノなどと誤魔化してはいられない筈だ。
そして、結婚の話が出たら、どうするつもりなのか、
そんなことを考えると、私は言い知れぬ恐怖に襲われ、眠れなくなるのだった。
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