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095. 翼
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「イアン牧師、もっとしっかり言ってやって下さいよ!」
オルジェがスプーンを握り締めながらトレルの方を睨む。
「しかし、トレルは昨日も教会の用で行ってもらいましたからねぇ…
この人は、こう見えてけっこうちゃんと働いてくれているのですよ。」
そう言って、イアンが穏やかに微笑む。
「おまえと違って、俺はやることはやってるんだよ。」
「なんだよ!」
子供の頃は一緒に住んでいたトレル達も、それなりの年齢になってからは、皆、一人で住むようになった。
しかし、イアン牧師の提案で、週に一度は皆で一緒に食事を採ることになっていた。
「オルジェ、そんなにむくれてないで早く食べなさいよ。
せっかくの料理が冷たくなるわ。」
「そうだぞ、せっかくおまえの大好きなケイトが作ってくれたんだからな。」
「だ、だ、誰が、大好きなんだ!
おかしなこと、言うな!」
「あれ~?オルジェ…
おまえ、なんでそんなに真っ赤になってるんだ?
おまえは本当に晩生だな。
今度、可愛い女の子でも紹介してやろうか?」
「もうっ!
トレルったら、オルジェをからかうのはやめて!」
「はいはい、わかりましたよ。」
そんなオルジェ達の様子を、イアン牧師は微笑みながらみつめている。
それぞれに不幸な事情を持った子供達ももう一人立ち出来る年齢になった。
今のイアン牧師の悩みは、オルジェがいまだコンジュラシオンになることを拒んでいることだけ。
特に何かやりたいことがあるわけでもないのに、オルジェは頑なにその職業を拒んでいる…
イアンには、オルジェが、ただ、自分の運命とも思える押し付けられた将来に懸命に逆らっているだけのように思えた。
(もう少し時間をかけねばならないようですね…)
オルジェの方を見ながら、イアン牧師は小さな溜息を吐いた。
トレルはそんなイアンの心の中を見透かしていた。
(心配しなくても、そのうち奴もやる気になるさ…
……いやでもなんでも、奴にはその道しかないんだからな…)
俯くトレルの表情に暗い影が差した。
「イアン牧師、もっとしっかり言ってやって下さいよ!」
オルジェがスプーンを握り締めながらトレルの方を睨む。
「しかし、トレルは昨日も教会の用で行ってもらいましたからねぇ…
この人は、こう見えてけっこうちゃんと働いてくれているのですよ。」
そう言って、イアンが穏やかに微笑む。
「おまえと違って、俺はやることはやってるんだよ。」
「なんだよ!」
子供の頃は一緒に住んでいたトレル達も、それなりの年齢になってからは、皆、一人で住むようになった。
しかし、イアン牧師の提案で、週に一度は皆で一緒に食事を採ることになっていた。
「オルジェ、そんなにむくれてないで早く食べなさいよ。
せっかくの料理が冷たくなるわ。」
「そうだぞ、せっかくおまえの大好きなケイトが作ってくれたんだからな。」
「だ、だ、誰が、大好きなんだ!
おかしなこと、言うな!」
「あれ~?オルジェ…
おまえ、なんでそんなに真っ赤になってるんだ?
おまえは本当に晩生だな。
今度、可愛い女の子でも紹介してやろうか?」
「もうっ!
トレルったら、オルジェをからかうのはやめて!」
「はいはい、わかりましたよ。」
そんなオルジェ達の様子を、イアン牧師は微笑みながらみつめている。
それぞれに不幸な事情を持った子供達ももう一人立ち出来る年齢になった。
今のイアン牧師の悩みは、オルジェがいまだコンジュラシオンになることを拒んでいることだけ。
特に何かやりたいことがあるわけでもないのに、オルジェは頑なにその職業を拒んでいる…
イアンには、オルジェが、ただ、自分の運命とも思える押し付けられた将来に懸命に逆らっているだけのように思えた。
(もう少し時間をかけねばならないようですね…)
オルジェの方を見ながら、イアン牧師は小さな溜息を吐いた。
トレルはそんなイアンの心の中を見透かしていた。
(心配しなくても、そのうち奴もやる気になるさ…
……いやでもなんでも、奴にはその道しかないんだからな…)
俯くトレルの表情に暗い影が差した。
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