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ルカ(聖夜月ルカ)

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093. 忘れられない

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静かな水音が心地良い…
しかし、その水は清清しい水音とは不釣合いな程、茶色く濁ったものだった。
薄暗い中でもそれがよくわかる。

なんとも言い難い違和感を感じながら、私は川縁に沿って歩いていた。



(上流で土砂崩れでもあったのだろうか?)



しかし、水量は増えた感じがない…
では、どういうことなのか?



そんなことを考えながら歩いているうちにあたりはすっかり暗くなった。
ランプに灯を灯し、川の流れを遡りながら歩いていく…

野宿をするとすればどのあたりが良いのだろうかとあたりを見渡したが、小さなランプの灯かりでは回りの様子はあまりよく見えず、気分は沈むばかりだった。



しかし、そんな気分もすぐに吹き飛んだ!
小さな灯かりがあちらこちらに見えてきたのだ。

町だ!
私は、歩く速度を速め、灯かりに向かって進んで行った。



町へは思ったよりも距離があったが、そんなことはこの際どうでも良い。
町に入るなり、私は宿を探した。
さほど大きな町ではなかったが、幸いなことに一軒だけ古い小さな宿があった。

そこは食堂と宿を兼ねた店だった。
昼過ぎにちょっとしたものを口にしただけだったので、私は早速食べるものを注文した。

野宿しないで済むことに安堵し、そして、温かいもので腹が満たされた時、店の主人らしき男がお茶を持ってやって来た。



「お客さんはここへはなんで…?
やっぱり記憶の泉を目当てに来られたんですか?」

「記憶の泉…?」

「違うんですか?」

「私は、あてのない旅をしているのですが、ここへはたまたま立ち寄っただけなのです。」

「たまたま…?
このあたりには記憶の泉以外にはなにもありませんよ。
記憶の泉自体、最近はすっかり忘れられて、訪れる人もめっきり少なくなってますがね…」

「何なのです?それは…」

「いやぁ…迷信みたいなもんですよ。
それに…きっと、お客さんには必要ないと思います。」



しかし、そんなことを言われると余計にどういうことなのか聞きたくなる。



「あの…それは…」

私が話を聞こうとした時、他の客が店に入って来たために話を聞くタイミングを失ってしまった。
料理はあの男が作るようで、もうしばらくはかかるだろう。
食事も済ませてしまったことだし、ここに長くいるのも気がひけ、私は話を聞くのを諦めて部屋に戻ることにした。
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