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ルカ(聖夜月ルカ)

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092. 面影

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「何を隠してたんだい?」

 訊きたくないような気もしたけれど、やはり訊かないわけにはいかない。



 「実は…私があなたを好きになったのは…
あなたが父に似ていたからなの。」

 「僕が…お父さんに…?」

 「ええ…私の父は私が5歳の時に亡くなった…
そのせいなのか、私…父に似た人を見たら、それだけで好きになってしまって…」



 同じだ……
まさか、彼女が僕と同じ、そんなことをしていたなんて、信じられない気持ちだった。



 「……でも、見た目だけで好きになった相手とは、いつも長続きしなかった…」

 僕がそう言うと、サーシャは目を丸くして僕をみつめた。



 「どうしてわかるの!?」



 彼女はそんなところまで僕と同じだった。
そう思ったら、僕はなおさら彼女のことが愛しく思えた。



 「そんなこと、気にすることはないよ。
サーシャ、もう一度言う…僕と結婚してくれ!」

 「良いの?本当に良いの?
 確かに、そんな理由からあなたのことを好きになったけど、でも、あなたとは不思議とうまくいった。
 今までの人とあなたは違ったの…」

 「良いんだ。何も気にしなくて…」

 「エドワード!」

 僕はサーシャを強く抱きしめた。



 *



 「不思議だな。
サーシャはなんだかメリアにとても似ている。」

 父がそう言ったのは、僕の家で、サーシャと父と三人で食事をした時のことだった。
サーシャが席をはずしている時、父がぽつりとそんなことを口にした。



 「サーシャが母さんに?
 全然似てないと思うけど…」

 「いや、そっくりだ。
どこか抜けてるところも似てるし、笑い声や仕草が妙に似てるんだ。」

 「……そうなの?」

 僕は、まだ小さかったせいか、そこまで覚えてはいなかったけど、父のその言葉で僕が彼女に惹かれた理由が分かったような気がした。



 「あら、二人で何のおはな…あーーーっ!」

 「危ない!」

 絨毯に足を取られ、あやうく転びそうになった彼女を僕は受け止めた。



 「ありがとう。お酒が割れなくて良かった…」

 「そうじゃないだろ。
 君が転ばなくて良かった、だよ。」

 「……そうね。」

そそっかしい彼女に父は苦笑する。



 (いつか、僕が君と同じことをしていたことを話したら、君はどう言うだろう?)



 僕は知らないうちに、また母の面影を追っていた。
 記憶していなかったはずの面影を…



でも、そんなことはどうでも良い。
 僕は、心から彼女を愛しているのだから。



そして、それは彼女もまた同じだと思える。
こんな素敵な彼女に出会うことが出来たのは、きっと母の導きだろう。



 (ありがとう、母さん…)

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