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089. 寄り道
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その時、あたりにラッパの音が鳴り響き、狼たちは戸惑い怯えた様子を見せた。
「リラ!あれを!」
ガブリエルが指さす先を見上げると、そこには馬車が浮かんでいた。
馬車は、ゆっくりと二人の傍に降りて来る。
狼たちは、その場から散り散りに逃げ惑う…
「早くお乗りなさい!」
「え?……牧師様?」
ふたりは慌てて馬車に乗り込み、馬車はまた空に向かって飛び立った。
「牧師様、これは一体どういうことなのです!?」
「君が、今日、私に訊ねた異世界への馬車…
実は、私はその御者なのだ。
過酷な人生も意味のあることに違いはない。
そこから逃げることは良いことだとは言えない。
だが…背負いきれない程の不幸を背負った人間がいるのも確かだ。
私は、そういう人を違う世界に連れて行く。
君も今まで精一杯頑張った。
だから、これからはこことは違う世界で幸せに暮らしなさい。
君のことを心から大切に想ってくれているこのガブリエルと一緒に。」
「牧師様…どうもありがとうございます。」
リラとガブリエルは、熱い涙を流した。
馬車は、音もなく高い空へと昇って行く…
「牧師様!すみません!
少しだけ、寄って行きたい場所があるんですが…」
「どこですか?」
*
馬車が向かったのは、村のはずれの山にある、リラとガブリエルの両親の墓だった。
そこで、ふたりは各々の墓に報告を済ませた。
「じゃあ、行きますよ。」
「はい。」
馬車は、星の瞬く空を飛び越え…やがて、見えなくなった。
「リラ!あれを!」
ガブリエルが指さす先を見上げると、そこには馬車が浮かんでいた。
馬車は、ゆっくりと二人の傍に降りて来る。
狼たちは、その場から散り散りに逃げ惑う…
「早くお乗りなさい!」
「え?……牧師様?」
ふたりは慌てて馬車に乗り込み、馬車はまた空に向かって飛び立った。
「牧師様、これは一体どういうことなのです!?」
「君が、今日、私に訊ねた異世界への馬車…
実は、私はその御者なのだ。
過酷な人生も意味のあることに違いはない。
そこから逃げることは良いことだとは言えない。
だが…背負いきれない程の不幸を背負った人間がいるのも確かだ。
私は、そういう人を違う世界に連れて行く。
君も今まで精一杯頑張った。
だから、これからはこことは違う世界で幸せに暮らしなさい。
君のことを心から大切に想ってくれているこのガブリエルと一緒に。」
「牧師様…どうもありがとうございます。」
リラとガブリエルは、熱い涙を流した。
馬車は、音もなく高い空へと昇って行く…
「牧師様!すみません!
少しだけ、寄って行きたい場所があるんですが…」
「どこですか?」
*
馬車が向かったのは、村のはずれの山にある、リラとガブリエルの両親の墓だった。
そこで、ふたりは各々の墓に報告を済ませた。
「じゃあ、行きますよ。」
「はい。」
馬車は、星の瞬く空を飛び越え…やがて、見えなくなった。
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