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082. 飛燕
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そっと目を閉じれば、そこにはさらに鮮明なナディアの顔が思い浮かぶ。
楽しそうに笑う太陽のような笑顔…
気の強さが現れる怒った時の顔…
そして、リュックと別れる時の辛そうな泣き顔…
(……きっともう結婚してるよな…
あんな美人、男達がほっとくわけがない…
その方が良い…俺なんか待つだけ損だ…)
リュックは、彼女との出会いから一緒に過ごした短い時の記憶を遡る。
ナディアのことを愛しく想う気持ちを忘れたことはない。
いつも心の片隅にナディアがいることが、リュックの支えであり癒しであった。
だが、その反面、彼女との結婚のことを考えると、リュックは途端に沈んだ気持ちになるのだった。
(緑の玉を飲まなくなってからずいぶん経つが、俺の身体には特別大きな変化はない。
マルタンは、俺があれ以来ごく普通の人間と同じように年を取ってきているようだと言った…
でも…この先もずっとそうだとは限らない。
ある日突然俺の身体が崩れてしまうことだってあるかもしれない。
……俺は、本当ならとっくにこの世をおさらばしてる年なんだから、いつ朽ち果てても不思議はないさ…
それに、こんなこと、ナディアには言えやしない。
言った所で頭がおかしいと思われるのが落ちだ。
でも、一生、隠し事をして生きていかなきゃならないなんて、そんなこと…きっと俺には無理だ…)
リュックは服の上から、胸にかけたロザリオをぎゅっと握り締めた。
(きっと、俺が結婚なんかしないように、天がこの役目を授けてくれたんだ。
……いや、そうじゃない。
俺は海底神殿のことを逃げ道にしてるだけだよな。
ナディアと正面から向かい合うのが怖いから…だから、俺はこんな一生かかってもみつけられないようなもんを探そうとしてるんだ…)
自分の心の中を分析し、リュックは自分のふがいなさに苛立ちを感じ、唇を固く噛み締めた。
楽しそうに笑う太陽のような笑顔…
気の強さが現れる怒った時の顔…
そして、リュックと別れる時の辛そうな泣き顔…
(……きっともう結婚してるよな…
あんな美人、男達がほっとくわけがない…
その方が良い…俺なんか待つだけ損だ…)
リュックは、彼女との出会いから一緒に過ごした短い時の記憶を遡る。
ナディアのことを愛しく想う気持ちを忘れたことはない。
いつも心の片隅にナディアがいることが、リュックの支えであり癒しであった。
だが、その反面、彼女との結婚のことを考えると、リュックは途端に沈んだ気持ちになるのだった。
(緑の玉を飲まなくなってからずいぶん経つが、俺の身体には特別大きな変化はない。
マルタンは、俺があれ以来ごく普通の人間と同じように年を取ってきているようだと言った…
でも…この先もずっとそうだとは限らない。
ある日突然俺の身体が崩れてしまうことだってあるかもしれない。
……俺は、本当ならとっくにこの世をおさらばしてる年なんだから、いつ朽ち果てても不思議はないさ…
それに、こんなこと、ナディアには言えやしない。
言った所で頭がおかしいと思われるのが落ちだ。
でも、一生、隠し事をして生きていかなきゃならないなんて、そんなこと…きっと俺には無理だ…)
リュックは服の上から、胸にかけたロザリオをぎゅっと握り締めた。
(きっと、俺が結婚なんかしないように、天がこの役目を授けてくれたんだ。
……いや、そうじゃない。
俺は海底神殿のことを逃げ道にしてるだけだよな。
ナディアと正面から向かい合うのが怖いから…だから、俺はこんな一生かかってもみつけられないようなもんを探そうとしてるんだ…)
自分の心の中を分析し、リュックは自分のふがいなさに苛立ちを感じ、唇を固く噛み締めた。
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