Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
552 / 697
078. 異国の歌

しおりを挟む
これから住む事にはなったものの、まだよく知らない町の夜道はなんとなく心細い。
ふと、あの歌を口ずさみそうになり、そしてすぐに口をつぐんだ。

ニコラスとのことがあって以来、あの曲は今までのあの曲とは違う…
歌いたいのに辛くなる…そんな複雑な想いの曲になってしまっていた。

その時、どこからか風に乗って低い男性の歌声が聞こえて来た。
アンナはふと足を留め、耳を澄ます。
どことなく懐かしい想いのするその歌声…



(この曲は……!!)



そう…その曲は、アンナの大好きなあの異国の歌だったのだ。
道の傍らに腰掛け、神経を集中し目を閉じてじっとその歌声に耳を澄ます…



(少し違うけど…
間違いないわ!
私の知ってるあの曲だわ!)



アンナの覚えてる曲とは、ほんの少し言葉が違うように思えたが、メロディは間違いなくあの曲のものだった。



(誰が歌ってるのかしら?)



アンナは立ち上がり、あたりを見まわしたが暗くてよくわからない。
どちらの方向から聞こえてくるのか確かめようと、もう一度目を閉じ神経を集中していると、その歌声が不意に途切れた。



(えっ…?!どうしたの?)



しばらく待っていたが、その後も歌声が聞こえて来ることはなかった。
あたりはますます暗くなってくる。
アンナは、仕方なく諦め、家に戻った。

家に戻ってからも、先程のあの歌声のことが頭から離れなかった。



(誰が歌ってたのかしら?
あの国の人かしら?
絶対にみつけたいわ。
どこの、なんて曲なのか聞いてみたい!
どんなことが歌われてるのか、知りたい!)



そのことで頭の中はいっぱいだったが、とにかく今はどうする術もない。
あの町に行けば、きっといつかその望みが叶うと信じ、アンナは無理に休むことにした。







次の朝、アンナは隣町に引っ越した。
荷物の整理もそこそこに、アンナはあたりが暗くなると昨日のあの場所を訪れた。
あの歌声が流れて来るのを耳を澄ましてじっと待ったが、いつまで待っても聞こえて来る事はなかった。



(今日は、なにか用でもあったんだわ、きっと…
また明日、来てみましょう。)



そう自分に言い聞かせて、アンナは重い足取りで家へ戻った。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...