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ルカ(聖夜月ルカ)

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076. 野望

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(あ…あんまりだ…
私は楊俊様にはいつも良くしてさしあげているのに…
今日だって、女人島に連れて行ってもらえると思ったからこそ、遠い町まで買い物に行って来たというのに…
酷い、酷過ぎる…!
……だが、イケメンコンテストはここ最近ではいつも楊俊様の優勝…
このあたりには、楊俊様をしのぐイケメン等…………ん??)

李雲は、唐突に現れた一人の青年にふと目を留めた。
青年は、大きな籠を背負い、身をかがめ必死になって何かを探している。



「……何か、お探しかな?」

なんとなく気をひかれた李雲は、青年に近付き声をかけた。



「このあたりに、つくしかわらびはないかと思いまして…」

顔を上げた青年を見た李雲は水槽から持ち出された金魚のように口をぱくぱくと開け空気を求めた。



「そ、そ、そなたは神の御使いじゃあ~~!!」

「神の使い?
何を馬鹿げたことを…
某は、胡燕と申すただの軍人です。」

「軍人だろうが宇宙人だろうが、そんなことは関係ない!
そなたこそ、私の元に遣わされた神様の御使いに間違いない!
やはり神様は、ちゃんと見ていて下さるのじゃ…」

李雲は両手を擦り合わせて天を仰いで涙にむせぶ…



(ふふふふふ……
楊俊様…今年のイケメンコンテストの優勝はいただきましたぞ。
女人島に行くのは、あなた様ではなくこの私です…ふふふふふ……)



号泣したかと思うと、突然、不気味な笑みを浮かべる李雲に怯えた胡燕は、李雲に気付かれないようそろりそろりと歩き去る。



「待たれよ…」

奈落の底から響くような声と共に、胡燕は後ろから袖を引っ張られ、仕方なく立ち止まった。



「どこに行かれるのじゃ?」

「え…?そ、その…ここらにはつくしもわらびも無さそうなので、家に戻ろうかと思いまして…」

胡燕は李雲と目をあわさないよう気をつけながら、小さな声で答えた。



「つくしにわらび?
そんなものより、ステーキにあわびはいかがですかな?」

「えっっ!ス、ス、ス、ステーキにあわ、あわ、あわび…!?」

その言葉がまるで呪文のように胡燕の脳に働きかける。
以前、上官の昇進祝いの宴席でそれらを食べた時の記憶が甦り、その甘美な記憶に胡燕の頬は赤く染まり、瞳は夢見がちに潤んだ。



「ス、ス、ス………」

あまりの興奮に、胡燕の舌はもつれ、その身体はがたがたと震え出す。



「さぁ、行きましょう…
私があなたにステーキとあわびをご馳走して進ぜよう…」

夢に浮かされたように、胡燕は李雲に手を引かれて着いて行く…


 
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