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071. 雨に濡れても
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「フィーネ、気を付けて行くのよ。
無理だったら途中で戻って来るのよ!」
「もう~っ!
母さんったらまだそんなこと言ってるの?!
大丈夫だって言ってるでしょ!
そんなことより、母さんこそ早く家の中に入って!
足が痛むんでしょう?」
「私は大丈夫だよ。それよりフィーネ…」
「言って来ま~す!」
「あ、フィーネ!!
そんなに走っちゃ…」
心配性の母親・ライザの声が届かない所へ、フィーネは駆け出した。
曲がり角まで走り、ライザの姿が見えなくなるのを確認するとフィーネは走るのをやめ、ゆっくりと歩き始めた。
(本当に母さんは心配性なんだから…)
フィーネは、小さな溜息を吐いた。
フィーネが向かう場所は隣町のはずれに住む祖母の家。
手に持ったかご一杯のいちごから、甘酸っぱい香りが漂っている。
祖母の家までは、遠いと言えば遠い。
朝早くに出ても帰りは夕方になっている。
しかし、フィーネももう15歳。
その程度のお使いが出来ない年齢ではない。
ただ、フィーネは幼い頃から身体が弱かった。
そのため、祖母の家に用がある時はいつもライザが出向き、フィーネは家で留守番と言うのが常だった。
今回もそうすることになっていたのだが、昨日、フィーネの母親が畑で転んで足をくじいてしまったため、代わりにフィーネが行く事になったのだ。
(身体が弱かったのは昔のこと。
最近は、寝こむ事もめったにないし、こんなに元気になったのに母さんったら本当に過保護なんだから!)
フィーネの父親は、彼女がまだ幼い頃に亡くなった。
それからは、母とフィーネより十歳年上の兄・ランドルフとの三人で暮らして来た。
ランドルフは、十七から都会に出て働き、仕送りをしてくれている。
実家には年に一度しか帰って来ないため、フィーネはそのほとんどを母親と二人きりで過して来た。
そんな状況の中では、母親がフィーネに対して多少過保護になってしまうのも仕方のないことだったのかもしれない。
(これからは、私がおばあちゃんの所に行く事にしよう!
私ももう15歳なんだもの。
こんなことくらい、なんでもないって所を母さんに見せてやらなくちゃ!)
見慣れたはずの風景が、今日はどこか少し違って見える。
生まれて初めての一人歩きにフィーネの胸は高鳴っていた。
無理だったら途中で戻って来るのよ!」
「もう~っ!
母さんったらまだそんなこと言ってるの?!
大丈夫だって言ってるでしょ!
そんなことより、母さんこそ早く家の中に入って!
足が痛むんでしょう?」
「私は大丈夫だよ。それよりフィーネ…」
「言って来ま~す!」
「あ、フィーネ!!
そんなに走っちゃ…」
心配性の母親・ライザの声が届かない所へ、フィーネは駆け出した。
曲がり角まで走り、ライザの姿が見えなくなるのを確認するとフィーネは走るのをやめ、ゆっくりと歩き始めた。
(本当に母さんは心配性なんだから…)
フィーネは、小さな溜息を吐いた。
フィーネが向かう場所は隣町のはずれに住む祖母の家。
手に持ったかご一杯のいちごから、甘酸っぱい香りが漂っている。
祖母の家までは、遠いと言えば遠い。
朝早くに出ても帰りは夕方になっている。
しかし、フィーネももう15歳。
その程度のお使いが出来ない年齢ではない。
ただ、フィーネは幼い頃から身体が弱かった。
そのため、祖母の家に用がある時はいつもライザが出向き、フィーネは家で留守番と言うのが常だった。
今回もそうすることになっていたのだが、昨日、フィーネの母親が畑で転んで足をくじいてしまったため、代わりにフィーネが行く事になったのだ。
(身体が弱かったのは昔のこと。
最近は、寝こむ事もめったにないし、こんなに元気になったのに母さんったら本当に過保護なんだから!)
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それからは、母とフィーネより十歳年上の兄・ランドルフとの三人で暮らして来た。
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実家には年に一度しか帰って来ないため、フィーネはそのほとんどを母親と二人きりで過して来た。
そんな状況の中では、母親がフィーネに対して多少過保護になってしまうのも仕方のないことだったのかもしれない。
(これからは、私がおばあちゃんの所に行く事にしよう!
私ももう15歳なんだもの。
こんなことくらい、なんでもないって所を母さんに見せてやらなくちゃ!)
見慣れたはずの風景が、今日はどこか少し違って見える。
生まれて初めての一人歩きにフィーネの胸は高鳴っていた。
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