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067. 手紙
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歩きなれない道は少しだけ新鮮な気がした。
母が行きたいと言った場所は、ここから数時間程で着く海沿いの小さな町。
テレビでは、タレントが新鮮な海の幸を美味しそうに食べていた。
白い砂浜が続く真っ青な海を見ながら、のんびりと露店風呂も入るシーンも流されており、幸治の母はそれを見ながら「天国みたいだねぇ…」と呟いていたものだ。
そんな物思いを突き破るかのように、一台の車が幸治の脇をかすめ、ぬかるんだ茶色い土砂をはね上げて去って行った。
「あ……!!」
買ったばかりの綿パンとTシャツは無残に汚れてしまった。
それだけではない。
ひるんで後ずさった瞬間、水溜りに片足を突っ込んでしまい、スニーカーは靴下までぐっしょりと濡れてしまったのだ。
(最悪だ……)
幸治はその場に立ち尽くした。
こんな格好で旅行になんか行けない…そう思う気持ちと、どうせもう死ぬのだから着ているものなんてどうでも良いように思う気持ちがせめぎあった。
一歩踏み出すと、片足にとても不快な感触を感じた。
やはりこのままで行くなんてあり得ない…
そう結論を出した幸治は、仕方なく家に戻った。
もう二度と戻って来る事がないと思っていたその部屋で、早速、着替えを探したが、思った通り旅行に着ていけそうなものは見当たらなかった。
あの馬鹿高いスーツはさすがに着て行く気にはなれない。
こんなことなら、せめてTシャツだけでももう一枚買っておけば良かったと自分の貧乏性を悔やみながら、適当なものに着替えて近所のスーパーに向かった。
スーパーになんてろくなものはないだろうが、新しければそれで良い。
幸治はそう考えたのだが、あいにくスーパーは改装中だった。
仕方なく幸治はバスに乗り、少し離れた町のショッピングセンターに行った。
おかげで、近所のスーパーで買うよりはマシなのではないかと思うものが見つかった。
しかし、気が付けばあたりはもう薄暗い…
残念ながら出発するにはもう遅い。
幸治は出発を一日遅らせることにした。
母が行きたいと言った場所は、ここから数時間程で着く海沿いの小さな町。
テレビでは、タレントが新鮮な海の幸を美味しそうに食べていた。
白い砂浜が続く真っ青な海を見ながら、のんびりと露店風呂も入るシーンも流されており、幸治の母はそれを見ながら「天国みたいだねぇ…」と呟いていたものだ。
そんな物思いを突き破るかのように、一台の車が幸治の脇をかすめ、ぬかるんだ茶色い土砂をはね上げて去って行った。
「あ……!!」
買ったばかりの綿パンとTシャツは無残に汚れてしまった。
それだけではない。
ひるんで後ずさった瞬間、水溜りに片足を突っ込んでしまい、スニーカーは靴下までぐっしょりと濡れてしまったのだ。
(最悪だ……)
幸治はその場に立ち尽くした。
こんな格好で旅行になんか行けない…そう思う気持ちと、どうせもう死ぬのだから着ているものなんてどうでも良いように思う気持ちがせめぎあった。
一歩踏み出すと、片足にとても不快な感触を感じた。
やはりこのままで行くなんてあり得ない…
そう結論を出した幸治は、仕方なく家に戻った。
もう二度と戻って来る事がないと思っていたその部屋で、早速、着替えを探したが、思った通り旅行に着ていけそうなものは見当たらなかった。
あの馬鹿高いスーツはさすがに着て行く気にはなれない。
こんなことなら、せめてTシャツだけでももう一枚買っておけば良かったと自分の貧乏性を悔やみながら、適当なものに着替えて近所のスーパーに向かった。
スーパーになんてろくなものはないだろうが、新しければそれで良い。
幸治はそう考えたのだが、あいにくスーパーは改装中だった。
仕方なく幸治はバスに乗り、少し離れた町のショッピングセンターに行った。
おかげで、近所のスーパーで買うよりはマシなのではないかと思うものが見つかった。
しかし、気が付けばあたりはもう薄暗い…
残念ながら出発するにはもう遅い。
幸治は出発を一日遅らせることにした。
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