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060. 犬狼星(シリウス)
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「い……
誰だ、こんな所に突っ立ってるのは!」
はっきりと見えたわけではなかったが、その輪郭や大きさ、そして何よりその者が言葉を発したことで、熊ではないことがわかった。
俺は、持っていた懐中電灯をつけようとしたが、ぶつかった衝撃でどこかに転がってしまったようだ。
「なんとか言ったらどうなんだ?!」
男の声と共に、眩い光が俺の顔に当てられた。
「あ……ごめん。」
咄嗟に俺は謝ってしまったが、ぶつかってきたのは相手の方だ。
「ぶつかって来たのは君の方じゃないか!」
俺は、謝った舌の根も乾かないうちにそんな言葉を吐いていた。
「なんだ?おかしな奴…
おまえ…二重人格か?!」
二重人格…
なんでいきなりそんな話になるんだ…
しかし、まぁ、そう言われても仕方のないことを言ったのも事実だと思い直した。
「どうかしたのか?」
俺が黙ってることで心配でもしたのか、男の声のトーンは先程とは違い、穏やかなものに変わっていた。
「あの…ちょっと、それ…
眩しいんだけど…」
「え…?
あぁ、すまなかったな。」
相手の男がそう言った後、妙な沈黙の時間が流れた。
「……あのさ…
ちょっと、それ貸してくれる?
その懐中電灯…」
「あぁ…どうぞ。」
俺は受け取った懐中電灯で、相手の男を照らし出した。
男は、俺と同じくらいの年齢に見えた。
まるでアニメの主人公のように跳ね上がった変わったカットの髪形をしている。
顔は、とても精悍で野性的な印象だ。
日本人ではないようにも見えるが、言葉に外国語を感じさせるイントネーションはまったくない。
「納得した?」
「あぁ…ありがとう。
熊でなくて良かったよ。」
「熊ぁ?
犬ですまなかったな。」
「犬??」
彼が何のことを言ってるのか、俺にはわからなかったが、どう突っ込んで良いのかも思い浮かばなかったため、その話はスルーすることにした。
「あんた、名前は?」
「俺は、翔馬。」
「しょうま?どんな字?」
「翔ける馬。」
「馬かぁ…良いな、俺より速そうだな。」
ますます彼の言ってる言葉の意味がわからなくなった。
考えてみれば、こんな夜更けに山に来る奴なんて、まともであるはずがない。
もしかしたら危ない奴なのかもしれない。
見た目だけでは特におかしくはなさそうだが、会話の内容からしてもそれがよくわかる。
俺は、早々に彼と離れることを決めた。
「じゃあ、俺はこれで…」
立ちあがり、俺が服の土ぼこりを払っていると、おもむろに彼の腕が俺の腕を掴んだ。
誰だ、こんな所に突っ立ってるのは!」
はっきりと見えたわけではなかったが、その輪郭や大きさ、そして何よりその者が言葉を発したことで、熊ではないことがわかった。
俺は、持っていた懐中電灯をつけようとしたが、ぶつかった衝撃でどこかに転がってしまったようだ。
「なんとか言ったらどうなんだ?!」
男の声と共に、眩い光が俺の顔に当てられた。
「あ……ごめん。」
咄嗟に俺は謝ってしまったが、ぶつかってきたのは相手の方だ。
「ぶつかって来たのは君の方じゃないか!」
俺は、謝った舌の根も乾かないうちにそんな言葉を吐いていた。
「なんだ?おかしな奴…
おまえ…二重人格か?!」
二重人格…
なんでいきなりそんな話になるんだ…
しかし、まぁ、そう言われても仕方のないことを言ったのも事実だと思い直した。
「どうかしたのか?」
俺が黙ってることで心配でもしたのか、男の声のトーンは先程とは違い、穏やかなものに変わっていた。
「あの…ちょっと、それ…
眩しいんだけど…」
「え…?
あぁ、すまなかったな。」
相手の男がそう言った後、妙な沈黙の時間が流れた。
「……あのさ…
ちょっと、それ貸してくれる?
その懐中電灯…」
「あぁ…どうぞ。」
俺は受け取った懐中電灯で、相手の男を照らし出した。
男は、俺と同じくらいの年齢に見えた。
まるでアニメの主人公のように跳ね上がった変わったカットの髪形をしている。
顔は、とても精悍で野性的な印象だ。
日本人ではないようにも見えるが、言葉に外国語を感じさせるイントネーションはまったくない。
「納得した?」
「あぁ…ありがとう。
熊でなくて良かったよ。」
「熊ぁ?
犬ですまなかったな。」
「犬??」
彼が何のことを言ってるのか、俺にはわからなかったが、どう突っ込んで良いのかも思い浮かばなかったため、その話はスルーすることにした。
「あんた、名前は?」
「俺は、翔馬。」
「しょうま?どんな字?」
「翔ける馬。」
「馬かぁ…良いな、俺より速そうだな。」
ますます彼の言ってる言葉の意味がわからなくなった。
考えてみれば、こんな夜更けに山に来る奴なんて、まともであるはずがない。
もしかしたら危ない奴なのかもしれない。
見た目だけでは特におかしくはなさそうだが、会話の内容からしてもそれがよくわかる。
俺は、早々に彼と離れることを決めた。
「じゃあ、俺はこれで…」
立ちあがり、俺が服の土ぼこりを払っていると、おもむろに彼の腕が俺の腕を掴んだ。
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