Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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057. 陽炎

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「大丈夫だって。
僕、そんなこと、誰にも言わないから。」

「本当に本当?
ここのことが悪い人間にでも知れたらえらいことになるのよ。
だって、妖精の村には人間のほしがってる…あぁぁーーーー!」

妖精は、またうかつに口を滑らせたことに気付き、自分の頭をぽかぽかと叩き始めた。



「やめなよ、痛いだろ?
僕ね、友達も家族も誰もいないから、本当に誰にも言わないよ。
約束するよ。」

妖精は、頭を叩くのをぴたりと止め、僕の顔をじっとみつめながら近付いて来た。



「あんた、良い人ね。
……でも、やっぱり信用出来ないから、口止め料を払うわ。」

「いらないよ、そんなもん。」

「もらってくれないと困るの!」

妖精は忙しなく僕の周りを飛び回る。



「僕、本当に誰にも言わないってば!
話したくても誰かと話をすることさえ、めったにないんだから…!」

「そんなの信じられない!
良いから、なんでも欲しいものを言いなさいよ!
あんたの願いを叶えてあげるから!」

「願い事……?」

その一言に、僕の気持ちは揺らめいた。
本当になんでも叶えてもらえるなら…こんなトカゲ族なんてやめて人間になれたら……



「人間に…」

「何?あんた、人間になりたいの?」

「えっ…!?」

いつの間にか想いが口をついて出ていたことに驚き、僕は反射的に頭を振った。



「そんなことならお安いご用よ。
じゃ、それで良いのね!」

僕が違うって頭を振ってるのに、妖精はそんな勝手なことを言う。



「ま…待ってってば…!
もう少しだけ考えさせて……」

僕は慌ててそう言った。



「ねぇねぇねぇ、何を考えるの?
もしかして、かっこ悪い人間になっちゃったらどうしよう…とか?」

「えっ?……そっか…かっこ悪い人間になることもあるんだ…」

「ち、違うの?
だ、だって、どんな人間になるかは、運次第っていうか、その人の元々の持ち味が変換されるわけだから…」

妖精は僕から離れて高く飛びあがり、右往左往し始めた。
考えてみれば、僕はけっこう長く生きてる。
人間になったら、老人になってしまうかもしれない…そういうことだってあるんだと急に思い当たった。

 
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