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057. 陽炎
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すっかり息投合した僕達は、町に着くまでの間もずっと話し続けてた。
彼が僕を背中に乗せてくれたおかげで、疲れることも全くなかった。
その上、今はけっこうお金を持ってるから、一緒に宿に泊まろうと言ってくれた。
僕は当然野宿するつもりだったから、宿でゆっくり眠れると思ったらそれだけでもとても嬉しくなった。
だけど、宿屋に着いてすぐに、その楽しい気持ちはどこかに吹っ飛んでしまったんだ。
「悪いけど、動物は泊められないね。」
宿屋のおやじは意地悪くケンタロウをみつめながらそう言った。
「なんだとぉ!
俺は動物じゃねぇぞ!金だってちゃんと持ってるんだ!」
「いくら金を持ってるって言ったって、動物は動物だ!
うちに馬小屋でもあればそこに泊めてやるんだけどな…」
そう言うと、おやじは大きな声を上げて笑った。
「こ…こいつぅ…!」
「ケンタロウ、行こうよ。
僕、野宿は慣れてるから。」
僕は、ケンタロウをなだめ、腕をひっぱってなんとか外へ連れ出した。
「ケンタロウ、町のはずれに行ってみない?
そこだと…」
「なんで……」
「え……?」
「なんでおまえは怒らないんだ?
あんなこと言われて悔しくないのか!
……そうか、おまえも俺のことを動物だと思ってるんだな?
自分の方が人間に近いから、俺のことを見下してるんだ…!」
「ぼ、僕…そ…そんなこと……」
「もう良い!
おまえなら…おまえなら、俺のことをわかってくれるんじゃないかって思ったのが間違いだった!」
そう言い残すと、ケンタロウはその場から駆け出した。
「待って!待ってよ、ケンタロウ!
そうじゃないんだ!」
*
*
*
彼が僕を背中に乗せてくれたおかげで、疲れることも全くなかった。
その上、今はけっこうお金を持ってるから、一緒に宿に泊まろうと言ってくれた。
僕は当然野宿するつもりだったから、宿でゆっくり眠れると思ったらそれだけでもとても嬉しくなった。
だけど、宿屋に着いてすぐに、その楽しい気持ちはどこかに吹っ飛んでしまったんだ。
「悪いけど、動物は泊められないね。」
宿屋のおやじは意地悪くケンタロウをみつめながらそう言った。
「なんだとぉ!
俺は動物じゃねぇぞ!金だってちゃんと持ってるんだ!」
「いくら金を持ってるって言ったって、動物は動物だ!
うちに馬小屋でもあればそこに泊めてやるんだけどな…」
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「こ…こいつぅ…!」
「ケンタロウ、行こうよ。
僕、野宿は慣れてるから。」
僕は、ケンタロウをなだめ、腕をひっぱってなんとか外へ連れ出した。
「ケンタロウ、町のはずれに行ってみない?
そこだと…」
「なんで……」
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「なんでおまえは怒らないんだ?
あんなこと言われて悔しくないのか!
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自分の方が人間に近いから、俺のことを見下してるんだ…!」
「ぼ、僕…そ…そんなこと……」
「もう良い!
おまえなら…おまえなら、俺のことをわかってくれるんじゃないかって思ったのが間違いだった!」
そう言い残すと、ケンタロウはその場から駆け出した。
「待って!待ってよ、ケンタロウ!
そうじゃないんだ!」
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