Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
352 / 697
051. 黄金の竪琴

しおりを挟む
「何もそこまで意地を張らなくても、途中で帰れば良かったじゃないか。」

「仰る通りです。しかし、私達は引き際を逃してしまったのです。
…本当に馬鹿だったと思います。
でも、やっと今日…マシューさんのおかげでこの長かった賭けが終わったのです…」

「…故郷に帰るのかい?」

「ええ…もう私達を待つ人はいませんが…両親に報告するつもりです。
やっと、わかってくれた人がいたことを…
……マシューさん、どうか、この竪琴を受けとっていただけませんか…?」

「ま、まさか…こんな貴重なものを…」

マシューは、目を大きく見開いて差し出された名工の竪琴をみつめていた。


「貴重なものではありますが、わしらはもう演奏会をするつもりもありませんし、しなければならない意味もなくなりましたから…」

「でも、俺、さっきの演奏すっごく楽しかったぜ!
楽器がどうこうっていうのは俺には全然わからないけど、なんかこう…元気が出て来たような…
あ、俺はいつも元気か?!」

「ハハハ…
そう言っていただけるとわしらも嬉しいですよ。
この竪琴のせいでこんなにも長い間の時間を旅に費やしてしまいましたが…
でも、いやな想い出だけではないのです。
わしらは演奏することが好きですし、皆の喜ぶ顔を見るのが楽しみでもあったのですよ…」

「そのお気持ちは私にもよくわかりますよ。
では、これからは私がこの竪琴を弾きながらあなた方が今までやってこられたように町の人々を楽しませていきたいと思います。」

「ありがとう、マシューさん、
これで、わしらも安心して引退出来ます。」

「ところで、その黄金の竪琴はどうするんだ?」

「これは、私達の父の形見です。
楽器としての価値はありませんが、私達にとってはとても大切なものですから、これからも大切にしていこうと思います…」

「そうか、じゃあ、気を付けてな~!」

俺達は手を振りあって別れた。

爺さん達もこれでやっと家に帰れるんだな…
あのマシューって奴の演奏もいつか聴いてみたいもんだな…

…あ!!……しまった…!!
大切なことを聞くのを忘れてた!

「爺さ~ん!待ってくれ~!!
俺、聞きたいことがあったんだ~!!」

俺は爺さん達を追って話を聞いたが、残念ながら俺の知りたかった情報は聞けなかった。

仕方がない。
また、旅を続けよう!
今度はどんな出来事に巡り合えるか…楽しみだな! 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラッキーアイテムお題短編集7

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
オール1ページの超短編集です。

ラッキーアイテムお題短編集5

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ラッキーアイテムのお題で書いた短編集です。

赤い流れ星3

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
美幸とシュウ、そして、野々村と和彦はどうなる!? 流れ星シリーズ、第3弾。完結編です。 時空の門をくぐったひかりとシュウ… お互いの記憶をなくした二人は…? 誤解ばかりですれ違う和彦と野々村は、一体どうなる? ※表紙画はくまく様に描いていただきました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ラッキーアイテムお題短編集6

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
星座のラッキーアイテムをお題に書いた短編集です。

お礼(無謀)企画

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
リクエストによるSS集です。 主にファンタジーになるはずです。 リクエスト、激しく募集中! ※表紙イラストはBy.ハチムラリン様です。m(__)m

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

「異世界ファンタジーで15+1のお題」四

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
突然姿を消した友人を探し始めたセスは、不思議な世界に迷いこむ… 三の続編です。

処理中です...