Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
275 / 697
042. 錬金術

しおりを挟む
「ユキ!!これじゃ!」

「えっ?!」

物思いに耽っていたあたしの目の前に、いかにもあやしいビーカーが差し出された。
ビーカーの中には、緑色っぽい液体が入っていて、そこからは今まで嗅いだことのないような臭いと共に薄い煙のようなものが発生していた。



「おじいちゃん…もしかして、これが不老不死の薬…?」

「その通りじゃ!
わしの50余年の血と汗と努力の結晶じゃ!」

感激しているのか、ビーカーを持つおじいちゃんの手が震えている。



「そっか…良かったね!
おめでとう!
おじいちゃん!」

50年以上も苦労を重ねて来たんだから、もっと真面目に聞いてあげなくちゃいけなかったなとちょっと反省したあたしは、おじいちゃんにお祝の言葉を述べた。
もちろん、不老不死の薬っていうのは信用してないけど、おじいちゃんがそう思ってるならそれで良い…
本当に長い間、よく頑張ったよ!



「おまえの名も後世に残るぞ!」

「そうだね。
偉大な科学者であるおじいちゃんの孫だもんね!」 

「そんなことじゃあ、ない!
人類初の不老不死の人間としてじゃ!」




「え…っ?!」



(おじいちゃん…今、なんて…?
人類初の不老不死の人間って…
………まさかっ?!)



あたしは、悪い予感を感じ、くるりと回れ右をした。



「あ、そうだ!
洗濯物、取りこまなくっちゃ!」

そう言いながら、片足を一歩前に出した所で、あたしはおじいちゃんに襟首を掴まれた。



「洗濯物なら、これを飲んだ後でええ…」

おじいちゃんの小さな奥目が妖しく光る…
恐ろしい程の威圧感を含んだその瞳にみつめられると、誰も逆らう事は出来ない…!



(…ま…いっか。
今までにも死ぬようなことはなかったんだし、おじいちゃんはこれでも医者の資格も持ってるんだし…)

あたしは自分にそう言い聞かせながら、おじいちゃんの差し出すビーカーを受け取った。



(大丈夫、大丈夫!!)

なるべく余計なことは考えないようにして、あたしは、ビーカーの中の液体を一気に飲み干した。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラッキーアイテムお題短編集7

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
オール1ページの超短編集です。

ラッキーアイテムお題短編集5

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ラッキーアイテムのお題で書いた短編集です。

赤い流れ星3

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
美幸とシュウ、そして、野々村と和彦はどうなる!? 流れ星シリーズ、第3弾。完結編です。 時空の門をくぐったひかりとシュウ… お互いの記憶をなくした二人は…? 誤解ばかりですれ違う和彦と野々村は、一体どうなる? ※表紙画はくまく様に描いていただきました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ラッキーアイテムお題短編集6

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
星座のラッキーアイテムをお題に書いた短編集です。

お礼(無謀)企画

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
リクエストによるSS集です。 主にファンタジーになるはずです。 リクエスト、激しく募集中! ※表紙イラストはBy.ハチムラリン様です。m(__)m

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

「異世界ファンタジーで15+1のお題」四

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
突然姿を消した友人を探し始めたセスは、不思議な世界に迷いこむ… 三の続編です。

処理中です...