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ルカ(聖夜月ルカ)

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040. 月の慰め

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「そんなことがあったのか…辛い想いをしたんだね。
ファビエンヌ…可哀想に…」

ファビエンヌを咎めることなく、テオドールは温かい腕で彼女を抱き締めた。

テオドールはその後もずっとファビエンヌの傍に付き添い、木目細かに彼女の世話を焼いた。
ファビエンヌはそんな彼の中に真実の愛をみつけ、いつしかテオドールは彼女にとってかけがえのない人物になっていた。



「ファビエンヌ、明日、お母さんのお墓に結婚の報告に行こう。」

「そうね…きっと母さんも喜んでくれるわ。」

ついに結婚を決めた二人がエレーヌの墓を訪ねると、そこには花を手向ける初老の男性の姿があった。



「あの…もしかしたらあなたは母のお知りあいの方ですか?」

「母…?それでは、あなたはエレーヌの娘さんなのですか?!
おぉ…確かにどことなくエレーヌの面影が…
失礼しました。私はジャンという者です。
あなたのお母様とは同じ町の出身で若い頃の知り合いだったのです。
私はずっとあなたのお母様を探していました。
そしてやっとみつけたと思ったら、こんなことに…」

ジャンの皺がれた瞳に涙の粒が浮かぶ…



「母を探していて下さったんですか?
私は母の若い頃の話をほとんど聞いたことがないのですが、母とあなたは一体どういう…」

「娘さん…エレーヌの…あなたのお母様のお話を聞かせていただけますか?」

「ええ…もちろんです。
私も母の若い頃の話をお聞きしたいですわ。」

ジャンは、ゆっくりと頷いた。



「では、私の家に行きましょう。
少し待ってて下さいね。
私達、母に報告したいことがあって…」

「ええ…では、私はあそこで待っています。」

エレーヌに結婚の報告を済ませた二人は、ジャンと共に夕陽の中を歩き始めた。



「あ…もうお月様が出てるわ…」

「本当だ…
そういえば、エレーヌは月が好きでしたね。」

「ええ…母はお月様には月の女神様がいらっしゃるって信じてて、それで月の祠がある町に引っ越したんだって言ってました。
そこで毎日、私の病気のことを祈ってくれて…そのおかげだったのか私は本当に元気になれたんです。
私も母の言うことを信じて、アレクシアのことを女神様に祈れば良かった…」

涙ぐむファビエンヌをテオドールがそっと抱き寄せた。



「君が元気になれたのは君の運命がそう決まっていたからだよ。
アレクシアが助からなかったのもそれが彼女の運命だからさ。
運命は誰にもどうすることも出来ないんだから…」

「その通りですよ。
どんなこともこの世に起こるすべてのことは神のご意志なのです。
誰にも変える事は出来ません…」

「ええ…きっとそうですね…」

丸い月は、何も言わずただ三人の後を黙ってついてくる…
どこに行っても、ずっとずっと… 
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