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ルカ(聖夜月ルカ)

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040. 月の慰め

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「ファビエンヌ…寒いでしょう。そろそろ窓を閉めましょうね。」

「ううん、まだ閉めないで。
もう少しお月様を見ていたいの…
お月様を見てたら、なんとなく気分が落ち着くから…」

「……そう…じゃあ、もう少しだけよ。
寒くないようにしてね…」

エレーヌは、毛布をファビエンヌの首元まで引き上げた。
窓の空には輝く星達に囲まれた丸い月が、ぽっかりと浮かんでいる。
エレーヌとファビエンヌは、ただ黙ってその優しい月の灯かりをみつめていた。

しばらくしてふと見ると、やっと薬が効いたのかファビエンヌが静かな寝息を立てていた。
エレーヌは、音がしないように気を付けながらそっと窓を閉め、カーテンを引いた。



(おやすみ、ファビエンヌ…)

心の中でそう呟いて、エレーヌは静かに部屋を出た。









(本当に綺麗なお月様…)




丸い月が暗い夜道を歩くエレーヌの後をついて来る。
どこへ行く時も、お月様が一緒だから怖くない…

まだ子供だったエレーヌは、夜道を歩く時はいつもそう思うことを寂しい気持ちの支えにしていた。
祖母の薬をもらいに月に一度隣町まで行くのがエレーヌの仕事だった。
朝早くに出ても、帰りは暗くなる。
エレーヌにとっては一番辛い日…泣きそうな顔で家を出るエレーヌに、ある時、母が教えてくれたのだ。
「暗くなってもお月様がエレーヌについてきてくれるから大丈夫だよ。」

そんな昔のことをエレーヌは今でも忘れない。
幼い頃から月はエレーヌにとって身近でとても信頼出来る存在なのだ。



「女神様…月の女神様!
なにとぞ、ファビエンヌをお助け下さい!
先日、ついにお医者様から命の期限を宣告されました。
だけど、私はそんなこと信じません。
だって、あの子はまだ16なんですもの…
小さい頃からずっと病魔に苦しめられ、学校にも行ける事なく、友達さえ出来ず…
そんな辛いままで人生を終わって良いはずがありませんもの。
あの子はもう十分に苦しみました。
どうぞ、これからはあの子に幸せな人生を…
女神様…どうか、どうかよろしくお願いします!」

エレーヌは一心に祈った。
月の女神が願いを叶えてくれると言う伝説の月の祠で、エレーヌは毎晩月の女神に願いを掛ける。
それは、すべて、娘・ファビエンヌのこと…
ファビエンヌの病気さえ良くなれば、エレーヌには他に何も望むものはない…
エレーヌは、ファビエンヌの治療費のため、朝から晩まで働いた。
その甲斐あって、生きられても15歳までが限界だろうと言われていたファビエンヌがつい先日16歳の誕生日を迎えることが出来た。
この分なら、もしかしたらファビエンヌの病気は良くなるのではないか…
そんな甘い希望を抱いた頃から、ファビエンヌの容態はどんどん悪化していった。
もともと華奢なファビエンヌの手足は、まるで枯れ枝のようになってしまい、つい先日、医師からはあと三ヶ月も持てば良い方だろうと宣告されてしまったのだ。
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