Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
215 / 697
033. 獣人

しおりを挟む
(ほれ見ろ!
こんな男前が、わしの一言でこの通りじゃ!)

グレースは込み上げてくる嬉しさをこらえるのに必死だった。

根が真面目なグレースは、若い頃はひたすらに魔法の勉強に打ち込んだ。
グレースは元々さほど強い魔力を持ちあわせてはいなかった。
幼い頃から優秀な姉達と比べられては、いやな想いをし続けて育ってきた。
グレースが大人になるにつれ、そのコンプレックスも同時に大きく膨らみ続け、なんとかして姉達をしのぐ尊敬される魔法使いになりたいと強く想うようになり、寝る暇も惜しんで勉強した。
その努力の甲斐あって、グレースは薬の調合については一目置かれる存在になったが、魔法についてはやはり二人の姉に敵うことはなかった。
気が付けば、グレースは恋愛の一つもしないうちにそれなりの年齢になっており、それがまたグレースの新たなコンプレックスとなった。



魔法の強壮薬を飲んだグレースが最初に唱えた呪文は変身の呪文だった。
娘時代の自分をイメージして変身したその姿は、事実よりも相当美化されたものだったが、当のグレースはそのことには気付かず、根拠のない自信に満足していた。 



(なんと美しい…自分でも惚れ惚れするわい。
わしが、生涯独身だったのは、わしに魅力がなかったせいじゃあない!
勉強に打ちこんどったせいじゃ。
若い頃のわしはこんなに美しいんじゃ。
あの頃だって、その気になりさえすればモテモテだったに違いない!
今、それを証明して見せてやるぞ!)

鏡の前でもう一度にっこりと微笑んだグレースは、長い間使っていなかった箒に乗って町まで繰り出した。







(おぉ…男達が熱い眼差しでわしを見ておる。)

グレースは今まで感じたことのなかった視線に気を良くしていた。



「あのぉ…」

(き、来た!う、生まれて初めてのナンパじゃ!!)

「はい、なんでしょう?」

期待に胸を躍らせたグレースが振り向いた先にいたのは、どこからどう見ても冴えない男だった。
グレースは、期待の大きさの数倍大きな落胆を味わった。



「私、急いでるんです!」

グレースは男を睨み付け、吐き捨てるようにそう言うと、足早にその場所を離れた。



(ええぃ!腹の立つ!
なんで、あんな男がこのわしに声をかけるんじゃ!
身のほどを知れ!
今度会ったら、ヒキガエルに変えてくれるわ!)

記念すべき初ナンパを汚されたような気がして、それを考えるとグレースの怒りは時が経つごとに大きくなった。
そんな時、グレースの瞳に酒場の看板が映った。
酒でも飲んで気分転換をしようと思い、ふと立ち寄ったその店で、グレースは理想の男を発見する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

処理中です...