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029. 外つ国の遺産(とつくにのいさん)
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「お待たせ、チャック!」
「ルーシア!」
駆けて来たルーシアを、チャックは強く抱きしめた。
気が付けば、チャックがサマラ族の集落に来てから、三年の時が流れていた。
チャックはルドラの言葉をほぼマスターし、ギアがいなくても会話に困ることはなくなった。
サマラ族の皆と一緒に薬草から薬を作ったり、新鮮な果物からジャムを作って、町に売りに行くことにもすっかり慣れた。
町に行く度、チャックは水の中の町についての情報を調べたが、何ひとつ手がかりはみつけられなかった。
泉にも何度も潜ってみたが、町のある場所は深く、到底、そこまで息が続くことはなかった。
そんな状況でも、チャックの好奇心はおさまることを知らなかった。
何年だってこの場所に住み、いつか水の町の謎を突き止めることが自分の使命のようにチャックは感じ始めていた。
チャックとルーシアの間には、いつしか愛が芽生えていた。
しかし、サマラ族の者達は同じ部族の者としか婚姻を結ばない。
そのことが、チャックとルーシアの悩みの種だった。
月に一度の満月の夜…
その晩は、月の祭りが執り行われる。
月に感謝の舞いと祈りを捧げるのだ。
ふたりは、祭りの前に泉でこっそりと会っていた。
「ねぇ、ルーシア…一応、話すだけでも話してみないか?」
「だめよ。どうせ反対されるに決まってるし…それに、もしそんなことを話したら、私達、引き離されるかもしれないわ。」
「僕が説得するから!
それに、もしもだめだったら、ふたりで逃げれば良いじゃないか。
コレークに行って暮らしても良いし…」
ルーシアは俯き、小さく首を振った。
「だめ…私は、ここを離れることは出来ない。
サマラ族の者は、この森を離れることは出来ない掟なの…」
チャックは、ルーシアの悲しそうな顔を見るのが辛くて、返す言葉に戸惑った。
「お待たせ、チャック!」
「ルーシア!」
駆けて来たルーシアを、チャックは強く抱きしめた。
気が付けば、チャックがサマラ族の集落に来てから、三年の時が流れていた。
チャックはルドラの言葉をほぼマスターし、ギアがいなくても会話に困ることはなくなった。
サマラ族の皆と一緒に薬草から薬を作ったり、新鮮な果物からジャムを作って、町に売りに行くことにもすっかり慣れた。
町に行く度、チャックは水の中の町についての情報を調べたが、何ひとつ手がかりはみつけられなかった。
泉にも何度も潜ってみたが、町のある場所は深く、到底、そこまで息が続くことはなかった。
そんな状況でも、チャックの好奇心はおさまることを知らなかった。
何年だってこの場所に住み、いつか水の町の謎を突き止めることが自分の使命のようにチャックは感じ始めていた。
チャックとルーシアの間には、いつしか愛が芽生えていた。
しかし、サマラ族の者達は同じ部族の者としか婚姻を結ばない。
そのことが、チャックとルーシアの悩みの種だった。
月に一度の満月の夜…
その晩は、月の祭りが執り行われる。
月に感謝の舞いと祈りを捧げるのだ。
ふたりは、祭りの前に泉でこっそりと会っていた。
「ねぇ、ルーシア…一応、話すだけでも話してみないか?」
「だめよ。どうせ反対されるに決まってるし…それに、もしそんなことを話したら、私達、引き離されるかもしれないわ。」
「僕が説得するから!
それに、もしもだめだったら、ふたりで逃げれば良いじゃないか。
コレークに行って暮らしても良いし…」
ルーシアは俯き、小さく首を振った。
「だめ…私は、ここを離れることは出来ない。
サマラ族の者は、この森を離れることは出来ない掟なの…」
チャックは、ルーシアの悲しそうな顔を見るのが辛くて、返す言葉に戸惑った。
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