177 / 697
028. 闇払う陽の標
1
しおりを挟む
静かな寝息を立てて眠るトレルの髪をそっと撫でる…
(ふっ…子供みたいな顔をして…)
この子とのつきあいは…もう20年近くになるだろうか…
私達からすれば、ほんの瞬き程度の歳月に過ぎないが、初めて出会った頃からすると彼はずいぶんと変わった…
人間にとってはそれなりの年月だ…
最初は、まだ小さな男の子。
何も知らない純真無垢な子供だった…
私達、上級悪魔はそんな子供を相手にすることはまずないのだが、彼は普通の子供とはどこかが違った…
彼の心の中に渦巻く激しい憎しみ、その裏にある深い愛…
まるで何十年も生きてきた人間のような強くはっきりとした感情をその胸に持っていた。
だが、彼が持っていたのはそれだけではなかった。
彼は闇を払う陽の標を持った人物…
私達にとっては非常に目障りで厄介な人間…
こういう人間は早めに始末しておいた方が良い。
本人がそのことに気付く前に…
それは、今なら、たやすいこと…
ある時、彼は湖のほとりを一人で歩いていた。
「トレル…」
「……お姉ちゃん、誰?」
「私?私はあんたの友達だよ…」
「友達…?」
「そうさ…
トレル…湖の中で遊ばないか?」
「…湖の中で?」
私は湖の中にざばざばと足を踏み入れていった。
「服が濡れちゃうよ…」
「構わないさ…あんたもおいで…」
私は彼に向かって、両手を差し出した。
トレルは恐る恐る私の方へ歩いて来る。
「ほら、冷たくて気持ちが良いだろう…
もっとあちらへ行ってみよう…」
私はトレルの方を振り返らず、そのまま湖の中を歩き続けた。
私が振り返った時、水嵩はトレルの口あたりの所まで来ていた。
「トレル…早くおいで…
ここはもっと気持ちが良いぞ…」
(ふっ…子供みたいな顔をして…)
この子とのつきあいは…もう20年近くになるだろうか…
私達からすれば、ほんの瞬き程度の歳月に過ぎないが、初めて出会った頃からすると彼はずいぶんと変わった…
人間にとってはそれなりの年月だ…
最初は、まだ小さな男の子。
何も知らない純真無垢な子供だった…
私達、上級悪魔はそんな子供を相手にすることはまずないのだが、彼は普通の子供とはどこかが違った…
彼の心の中に渦巻く激しい憎しみ、その裏にある深い愛…
まるで何十年も生きてきた人間のような強くはっきりとした感情をその胸に持っていた。
だが、彼が持っていたのはそれだけではなかった。
彼は闇を払う陽の標を持った人物…
私達にとっては非常に目障りで厄介な人間…
こういう人間は早めに始末しておいた方が良い。
本人がそのことに気付く前に…
それは、今なら、たやすいこと…
ある時、彼は湖のほとりを一人で歩いていた。
「トレル…」
「……お姉ちゃん、誰?」
「私?私はあんたの友達だよ…」
「友達…?」
「そうさ…
トレル…湖の中で遊ばないか?」
「…湖の中で?」
私は湖の中にざばざばと足を踏み入れていった。
「服が濡れちゃうよ…」
「構わないさ…あんたもおいで…」
私は彼に向かって、両手を差し出した。
トレルは恐る恐る私の方へ歩いて来る。
「ほら、冷たくて気持ちが良いだろう…
もっとあちらへ行ってみよう…」
私はトレルの方を振り返らず、そのまま湖の中を歩き続けた。
私が振り返った時、水嵩はトレルの口あたりの所まで来ていた。
「トレル…早くおいで…
ここはもっと気持ちが良いぞ…」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる