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018. 変身
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(もうそろそろ良い頃合か…)
城の近くの物影に身を潜めたクラウスは、空に浮かんだ丸い月を見上げ微笑んだ。
暗くなるまでの間、クラウスは精霊にコンタクトを取ることを思い立ったが、それには何の反応もなかった。
この世界では、クラウスの能力も失われているということを彼は実感する。
「どうせ、そんなことだろうと思っていたさ。」
クラウスは、そんな強がりとも受け取れる言葉を呟いた。
ここでは、ごく普通の人間としての力しか持たない自分が、このおかしな状況を打破するためにはやはり協力者が必要だということを、クラウスはさらに強く感じていた。
立ち上がったクラウスは、秘密の通路を使い城の内部に潜入する。
城の様子は、クラウスの知るノスターナ城と何一つ変わった所はない。
側近さえも知らない狭い通路を使い、クラウスは現在この城の王子となっているシエルの部屋へ現れた。
「シエル!」
「やぁ、クラウス…」
シエルは、どこか不自然な笑顔でクラウスを出迎えた。
「シエル、私のことを知っているのか?」
「あぁ、よく知っているよ。
ずる賢く冷酷なチンピラ…心を入れ替えたふりをしても、やはりまともな仕事は続かなかったようだな。」
「……それにしてもたったの四日だぜ。」
背後から聞きなれた声が聞こえた。
「ルウザ!」
そこに立っていたのはルウザだけではなく、十数人の武装した兵士の姿だった。
「シシーから垂れこみがあった。
あの女、迷った末におまえを売ったんだ…
おまえ、あの女をあまりに苛め過ぎたんじゃないのか?」
シシーというのが、スラム街で出会ったあの女だということはクラウスにもすぐに見当が付いた。
「ま、待て…私は…」
「王子の誘拐を企てるとはとんでもない奴だ!
皆の者、こいつをひっとらえよ!」
「ち、違う!私は…!!」
クラウスは、釈明することも出来ないまま、あっという間に兵士達に取り押さえられた。
「そやつを庭へ!」
後手に縛り上げられ、さるぐつわを噛まされたクラウスは為す術をもたない。
ただ、引きずられるように庭へ連れ出された。
「王子をかどわかす等とは大罪。
その罪は死に値する…
おまえの命を持って購うが良い!」
庭の中央で押さえつけられたクラウスの眼前に、ルウザの持つ剣の刃が冷たく光る…
「クラウス!覚悟!!」
城の近くの物影に身を潜めたクラウスは、空に浮かんだ丸い月を見上げ微笑んだ。
暗くなるまでの間、クラウスは精霊にコンタクトを取ることを思い立ったが、それには何の反応もなかった。
この世界では、クラウスの能力も失われているということを彼は実感する。
「どうせ、そんなことだろうと思っていたさ。」
クラウスは、そんな強がりとも受け取れる言葉を呟いた。
ここでは、ごく普通の人間としての力しか持たない自分が、このおかしな状況を打破するためにはやはり協力者が必要だということを、クラウスはさらに強く感じていた。
立ち上がったクラウスは、秘密の通路を使い城の内部に潜入する。
城の様子は、クラウスの知るノスターナ城と何一つ変わった所はない。
側近さえも知らない狭い通路を使い、クラウスは現在この城の王子となっているシエルの部屋へ現れた。
「シエル!」
「やぁ、クラウス…」
シエルは、どこか不自然な笑顔でクラウスを出迎えた。
「シエル、私のことを知っているのか?」
「あぁ、よく知っているよ。
ずる賢く冷酷なチンピラ…心を入れ替えたふりをしても、やはりまともな仕事は続かなかったようだな。」
「……それにしてもたったの四日だぜ。」
背後から聞きなれた声が聞こえた。
「ルウザ!」
そこに立っていたのはルウザだけではなく、十数人の武装した兵士の姿だった。
「シシーから垂れこみがあった。
あの女、迷った末におまえを売ったんだ…
おまえ、あの女をあまりに苛め過ぎたんじゃないのか?」
シシーというのが、スラム街で出会ったあの女だということはクラウスにもすぐに見当が付いた。
「ま、待て…私は…」
「王子の誘拐を企てるとはとんでもない奴だ!
皆の者、こいつをひっとらえよ!」
「ち、違う!私は…!!」
クラウスは、釈明することも出来ないまま、あっという間に兵士達に取り押さえられた。
「そやつを庭へ!」
後手に縛り上げられ、さるぐつわを噛まされたクラウスは為す術をもたない。
ただ、引きずられるように庭へ連れ出された。
「王子をかどわかす等とは大罪。
その罪は死に値する…
おまえの命を持って購うが良い!」
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「クラウス!覚悟!!」
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