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ルカ(聖夜月ルカ)

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018. 変身

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町の中もいつもとまるで変わらない…ように思えた。
なぜなら、ノスターナの国の王子であるクラウスはそう滅多に町を訪れるわけではない。
そんなことをしたら、町の中が騒ぎになりかねないのだから。
だが、今のクラウスに関心を持つ者は一人もいない。




「あ…」

「ぼさっとするな!
あぶねぇじゃないか!」

荷車を引いた男に、後ろから突き飛ばされたクラウスはその場に倒れこむ。
そのことに気を留める者もなく、クラウスは服に付いた土埃を払いながら、ゆっくりと立ち上がった。



(まったく…なんてザマだ…)

心の中で愚痴をこぼしながら、クラウスは腹をさすった。



(こんなわけのわからない状況でも腹は減るものなのだな。
さて、どうしたものか…)

クラウスは、木陰に腰を降ろし、今一度、現在のことを考えた。



(私は、なぜだかはわからぬがおかしな世界に迷いこんでいる。
いや、ノスターナ自体は変わってはいないようだ。
だが、私はルウザの屋敷の使用人…今はそれもクビになってしまったが…
ここでは私は王子でもなんでもないただの貧乏な男に過ぎぬということか…
名前だけは変わっていないようだが…)

現在についてわかっていることを、クラウスはもう一度頭の中でまとめ直した。



(そして、今差し迫って困っている事は腹がすいたということ…)

それを確認すればする程、空腹が身に染みる。



(そうだ…シエルのところへ行こう。
奴ならきっとなんとかしてくれる…)

クラウスの脳裏にシエルの穏やかな笑顔が浮かぶ。
ルウザと比べ、何事においても常識的で優しい彼なら、クラウスのことを知らなかったとしても無下に追い返すとは思えなかったのだ。
安堵と期待の入り混じった気持ちを抱え、クラウスはシエルの屋敷へ向かって歩き出した。
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