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007. 森の木霊
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「もう~!あんたったら、なんで返事しないのよ!
心配したんだからね!
あらあら、なにこれ?
あんた、もしかしてここで寝てたの?」
茂みから現れた者は、一人で喋り捲ると、ナギの片頬に付いた土を優しく手で振り払った。
「……タバネさん…」
「どう?少しは気分良くなった?」
「えっ……気分って?!」
「もう~っ!この子ったら!」
タバネは、ナギの髪をくしゃくしゃと両手でなでると、その背中をそっと押した。
「ガイ達も心配してたんだよ。」
「えっ?ガイラルさんが?」
状況が飲みこめないままのナギを、タバネはどこかへ連れて行く。
*
「おぉっ、みつかったか!」
「この子ったら、この奥で、お昼寝してたわ。」
その言葉に、その場にいた男達がどっと笑った。
「あ…あの…あたし…」
「ガイ、ルウザ、もうこの子に飲ませちゃだめよ!」
「何も俺達が飲ませたわけじゃないぜ。
ナギが勝手に飲んだんだから…な、ナギ!」
「そうだぞ、すごい勢いで飲んでたから、てっきりナギはイケるクチなんだと思ってた。」
ガイラルとルウザの言葉に、ナギは記憶の糸を手繰り寄せる…
(……あ…!)
やがて、ナギは、記憶の源に辿りついた。
(そうだ!今日は、皆でピクニックに来てて…
ルウザさんの持って来た果実酒がとても甘くて美味しくて…)
口当たりの良さに騙され、次から次に飲み続けていたナギはいつしか酔っぱらい、少し風に当たってくると言って一人で歩き出したのだった。
見た目にはそれほど酔ったように見えなかったため、皆、気にも留めていなかったのだが、あまりに帰りが遅いのでタバネが探しに来たということだった。
「よく考えると、おかしな話ですよね。
ここで飲んでたのに『風に当たって来る』なんて…」
「言われてみりゃその通りだな。
そんなことにも誰一人気付かないなんてな。」
「皆、それなりに酔ってたからねぇ…」
「ま、良いじゃないか、こんな機会はめったにないんだし。」
「だよな!
そろそろ暗くなって来たし、この続きは町の酒場でってことにするか。」
「なによ、あんた達、町に戻ってもまだ飲む気なの?!」
「タバネも飲むだろ?」
タバネはにっこりと微笑んだ。
「ようし、今夜は飲み明かすわよ!」
どこか調子のはずれた歌を歌いながら、皆は、町に向かって歩き始めた。
「えーーーーー?!」
困惑したナギはその後を早足で追いかけて行くのだった。
心配したんだからね!
あらあら、なにこれ?
あんた、もしかしてここで寝てたの?」
茂みから現れた者は、一人で喋り捲ると、ナギの片頬に付いた土を優しく手で振り払った。
「……タバネさん…」
「どう?少しは気分良くなった?」
「えっ……気分って?!」
「もう~っ!この子ったら!」
タバネは、ナギの髪をくしゃくしゃと両手でなでると、その背中をそっと押した。
「ガイ達も心配してたんだよ。」
「えっ?ガイラルさんが?」
状況が飲みこめないままのナギを、タバネはどこかへ連れて行く。
*
「おぉっ、みつかったか!」
「この子ったら、この奥で、お昼寝してたわ。」
その言葉に、その場にいた男達がどっと笑った。
「あ…あの…あたし…」
「ガイ、ルウザ、もうこの子に飲ませちゃだめよ!」
「何も俺達が飲ませたわけじゃないぜ。
ナギが勝手に飲んだんだから…な、ナギ!」
「そうだぞ、すごい勢いで飲んでたから、てっきりナギはイケるクチなんだと思ってた。」
ガイラルとルウザの言葉に、ナギは記憶の糸を手繰り寄せる…
(……あ…!)
やがて、ナギは、記憶の源に辿りついた。
(そうだ!今日は、皆でピクニックに来てて…
ルウザさんの持って来た果実酒がとても甘くて美味しくて…)
口当たりの良さに騙され、次から次に飲み続けていたナギはいつしか酔っぱらい、少し風に当たってくると言って一人で歩き出したのだった。
見た目にはそれほど酔ったように見えなかったため、皆、気にも留めていなかったのだが、あまりに帰りが遅いのでタバネが探しに来たということだった。
「よく考えると、おかしな話ですよね。
ここで飲んでたのに『風に当たって来る』なんて…」
「言われてみりゃその通りだな。
そんなことにも誰一人気付かないなんてな。」
「皆、それなりに酔ってたからねぇ…」
「ま、良いじゃないか、こんな機会はめったにないんだし。」
「だよな!
そろそろ暗くなって来たし、この続きは町の酒場でってことにするか。」
「なによ、あんた達、町に戻ってもまだ飲む気なの?!」
「タバネも飲むだろ?」
タバネはにっこりと微笑んだ。
「ようし、今夜は飲み明かすわよ!」
どこか調子のはずれた歌を歌いながら、皆は、町に向かって歩き始めた。
「えーーーーー?!」
困惑したナギはその後を早足で追いかけて行くのだった。
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