20 / 697
003. 天界
3
しおりを挟む
*
「大天使様、なぜ、あのような悪人を天界へ連れて来なくてはならないのですか?
あのような者は、地獄へ行くべきなのでは?」
仕事にもだいぶ慣れて来たある時、シュミットは大天使に訊ねた。
「確かに、そう見えるかもしれぬな。
だが、そのリストに載っている者達は、悪しき心と同時に清らかな心も持ち合わせた者ばかりなのだ。
天界にて最後の審判をし、そこで僅かでも清らかな心の方が多ければ天界に残り、そうでない者は地獄に堕ちる。
その審判のため、ここに連れて来るのだ。」
「なるほど、そういうことだったんですね。」
シュミットは納得し、また魂を迎えに地上へ戻った。
*
(今日は、もうリストに載ってる人がいないわ。)
いつもは朝から晩まで魂を迎えに行くシュミットだったが、その日は珍しく夕方前に終わってしまった。
シュミットは、これといってすることもなく、天界の周りをふらふらと漂っていた。
初めての自由な時間に、シュミットは解放的な気分を感じて飛び回り、気が付けば、今まで行ったことのない辺境の場所へ辿り着いていた。
すると、ある一角になにかとても邪な気を感じ、シュミットは不思議に思い、その場所を目指した。
(あ、あれは…!!)
すでに天界に馴染んだシュミットには、そこにいる者が、悪しき者たちだということに気付いた。
本来ならば、地獄にいるはずの悪しき者たちが、天界の近くに集結していたのだ。
(な、なぜ、あのような者たちがこんなところに…!?)
「何者だ!?」
不意にひとりの悪しき者がシュミットの方を振り向き、大きな声を上げた。
シュミットは、反射的にその場から逃げ出した。
「あいつを捕まえろ!」
十数名の魔物たちが、シュミットを追いかけて来る。
シュミットは、必死になって逃げる。
だが、魔物たちの速度は思いの外速く、このままではもうすぐに追いつかれてしまう。
シュミットは、迫り来る恐怖に涙を流し、無意識に叫んだ。
「おじいちゃん!助けて!!」
「大天使様、なぜ、あのような悪人を天界へ連れて来なくてはならないのですか?
あのような者は、地獄へ行くべきなのでは?」
仕事にもだいぶ慣れて来たある時、シュミットは大天使に訊ねた。
「確かに、そう見えるかもしれぬな。
だが、そのリストに載っている者達は、悪しき心と同時に清らかな心も持ち合わせた者ばかりなのだ。
天界にて最後の審判をし、そこで僅かでも清らかな心の方が多ければ天界に残り、そうでない者は地獄に堕ちる。
その審判のため、ここに連れて来るのだ。」
「なるほど、そういうことだったんですね。」
シュミットは納得し、また魂を迎えに地上へ戻った。
*
(今日は、もうリストに載ってる人がいないわ。)
いつもは朝から晩まで魂を迎えに行くシュミットだったが、その日は珍しく夕方前に終わってしまった。
シュミットは、これといってすることもなく、天界の周りをふらふらと漂っていた。
初めての自由な時間に、シュミットは解放的な気分を感じて飛び回り、気が付けば、今まで行ったことのない辺境の場所へ辿り着いていた。
すると、ある一角になにかとても邪な気を感じ、シュミットは不思議に思い、その場所を目指した。
(あ、あれは…!!)
すでに天界に馴染んだシュミットには、そこにいる者が、悪しき者たちだということに気付いた。
本来ならば、地獄にいるはずの悪しき者たちが、天界の近くに集結していたのだ。
(な、なぜ、あのような者たちがこんなところに…!?)
「何者だ!?」
不意にひとりの悪しき者がシュミットの方を振り向き、大きな声を上げた。
シュミットは、反射的にその場から逃げ出した。
「あいつを捕まえろ!」
十数名の魔物たちが、シュミットを追いかけて来る。
シュミットは、必死になって逃げる。
だが、魔物たちの速度は思いの外速く、このままではもうすぐに追いつかれてしまう。
シュミットは、迫り来る恐怖に涙を流し、無意識に叫んだ。
「おじいちゃん!助けて!!」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
赤い流れ星3
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
美幸とシュウ、そして、野々村と和彦はどうなる!?
流れ星シリーズ、第3弾。完結編です。
時空の門をくぐったひかりとシュウ…
お互いの記憶をなくした二人は…?
誤解ばかりですれ違う和彦と野々村は、一体どうなる?
※表紙画はくまく様に描いていただきました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
深淵に眠る十字架
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
悪魔祓いになることを運命付けられた少年がその運命に逆らった時、歯車は軋み始めた…
※※この作品は、由海様とのリレー小説です。
表紙画も由海様の描かれたものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる