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偽り

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「よし!
俺、明日、マージにプロポーズするよ。」

「そうだ!その意気だ!
そういえばおふくろさんはどうしたんだ?」

「おふくろは、温泉が効いたのかずいぶんと身体の痛みがマシになったって喜んでたよ。
もうしばらくは、そこで静養させようと思ってるんだ。
その町にはおふくろの古くからの知り合いがいてな。
その人が面倒をみてくれてるんだ。」

「そうか、それは良かったな。」

「ずいぶんと雨風が酷くなって来たな。
ジュリアン、今夜はここに泊まって行けよ。」

「そうかい…じゃあ…」



その時、ジュリアンの脳裏にある不吉な予感がよぎった。




「ま、まずい!!
ハリー!今すぐ、宿屋へ戻るぞ!
あんたも一緒に来てくれ!」

「おいおい、外はひどい状態だぞ。
明日で良いじゃないか。」

「明日じゃだめなんだ!
早く、早く帰らないと!」

ジュリアンは、ハリーをひきずるように無理矢理に宿屋につれて帰った。



「あ~あ、下着までびしょ濡れだ。」

「誰か!誰かいませんか!!」

びしょ濡れになった衣類を触りながら嘆くハリーを尻目に、ジュリアンはカウンターに向かって大きな声で叫ぶ。



「はいはい。なんでしょうか?」

「おやじさん、マージは?
マージはいるかい?」

「マージなら部屋に…」

「本当にいるのか?
今すぐ確かめてくれ!」

「確かめるもなにも、こんな日にどこかに出て行くはずはないでしょう。」

「良いから、早く!!」

「はいはい、ちょっと待ってて下さいよ。」



「ジュリアン、どうしたんだ?」

ジュリアンのあまりの剣幕に驚いたハリーが尋ねた。




「もしかしたら、まずいことになってるかもしれない…」

「まずいこと?
ま、まさか…マージになにか?」

「まだわからないが…」



しばらくすると、宿の主人が女将と共に慌てた様子で戻って来た。




「マージが…マージがどこにもいないんです!」

「な、なんだって?
マージになにかあったんですか?」

「なにかって…まさか…いや、そんなことは…」

「何か思い当たることがあるんですか?」

「実は、先日、ケネス様が来られて、それで結婚の申し込みにお返事をしたんですが…」

マージの父親は、隣の妻の顔色をうかがうように小さな声でそう言った。



「ほら、ごらん!
やっぱりあの子は気が進まなかったんだ!」

「そんなことないさ。
マージは自分で結婚すると言ったんだから。」

「ケネス様には借金があるし、ハリー、あんたがこの町を出て行ったりするからそれであの子は…
ま、まさか、あの子…ケネス様と結婚するのがいやさに…!!」

そう呟いたマージの母親の顔から血の気がひいていく…

 
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