19 / 23
偽り
19
しおりを挟む
「よし!
俺、明日、マージにプロポーズするよ。」
「そうだ!その意気だ!
そういえばおふくろさんはどうしたんだ?」
「おふくろは、温泉が効いたのかずいぶんと身体の痛みがマシになったって喜んでたよ。
もうしばらくは、そこで静養させようと思ってるんだ。
その町にはおふくろの古くからの知り合いがいてな。
その人が面倒をみてくれてるんだ。」
「そうか、それは良かったな。」
「ずいぶんと雨風が酷くなって来たな。
ジュリアン、今夜はここに泊まって行けよ。」
「そうかい…じゃあ…」
その時、ジュリアンの脳裏にある不吉な予感がよぎった。
「ま、まずい!!
ハリー!今すぐ、宿屋へ戻るぞ!
あんたも一緒に来てくれ!」
「おいおい、外はひどい状態だぞ。
明日で良いじゃないか。」
「明日じゃだめなんだ!
早く、早く帰らないと!」
ジュリアンは、ハリーをひきずるように無理矢理に宿屋につれて帰った。
「あ~あ、下着までびしょ濡れだ。」
「誰か!誰かいませんか!!」
びしょ濡れになった衣類を触りながら嘆くハリーを尻目に、ジュリアンはカウンターに向かって大きな声で叫ぶ。
「はいはい。なんでしょうか?」
「おやじさん、マージは?
マージはいるかい?」
「マージなら部屋に…」
「本当にいるのか?
今すぐ確かめてくれ!」
「確かめるもなにも、こんな日にどこかに出て行くはずはないでしょう。」
「良いから、早く!!」
「はいはい、ちょっと待ってて下さいよ。」
「ジュリアン、どうしたんだ?」
ジュリアンのあまりの剣幕に驚いたハリーが尋ねた。
「もしかしたら、まずいことになってるかもしれない…」
「まずいこと?
ま、まさか…マージになにか?」
「まだわからないが…」
しばらくすると、宿の主人が女将と共に慌てた様子で戻って来た。
「マージが…マージがどこにもいないんです!」
「な、なんだって?
マージになにかあったんですか?」
「なにかって…まさか…いや、そんなことは…」
「何か思い当たることがあるんですか?」
「実は、先日、ケネス様が来られて、それで結婚の申し込みにお返事をしたんですが…」
マージの父親は、隣の妻の顔色をうかがうように小さな声でそう言った。
「ほら、ごらん!
やっぱりあの子は気が進まなかったんだ!」
「そんなことないさ。
マージは自分で結婚すると言ったんだから。」
「ケネス様には借金があるし、ハリー、あんたがこの町を出て行ったりするからそれであの子は…
ま、まさか、あの子…ケネス様と結婚するのがいやさに…!!」
そう呟いたマージの母親の顔から血の気がひいていく…
俺、明日、マージにプロポーズするよ。」
「そうだ!その意気だ!
そういえばおふくろさんはどうしたんだ?」
「おふくろは、温泉が効いたのかずいぶんと身体の痛みがマシになったって喜んでたよ。
もうしばらくは、そこで静養させようと思ってるんだ。
その町にはおふくろの古くからの知り合いがいてな。
その人が面倒をみてくれてるんだ。」
「そうか、それは良かったな。」
「ずいぶんと雨風が酷くなって来たな。
ジュリアン、今夜はここに泊まって行けよ。」
「そうかい…じゃあ…」
その時、ジュリアンの脳裏にある不吉な予感がよぎった。
「ま、まずい!!
ハリー!今すぐ、宿屋へ戻るぞ!
あんたも一緒に来てくれ!」
「おいおい、外はひどい状態だぞ。
明日で良いじゃないか。」
「明日じゃだめなんだ!
早く、早く帰らないと!」
ジュリアンは、ハリーをひきずるように無理矢理に宿屋につれて帰った。
「あ~あ、下着までびしょ濡れだ。」
「誰か!誰かいませんか!!」
びしょ濡れになった衣類を触りながら嘆くハリーを尻目に、ジュリアンはカウンターに向かって大きな声で叫ぶ。
「はいはい。なんでしょうか?」
「おやじさん、マージは?
マージはいるかい?」
「マージなら部屋に…」
「本当にいるのか?
今すぐ確かめてくれ!」
「確かめるもなにも、こんな日にどこかに出て行くはずはないでしょう。」
「良いから、早く!!」
「はいはい、ちょっと待ってて下さいよ。」
「ジュリアン、どうしたんだ?」
ジュリアンのあまりの剣幕に驚いたハリーが尋ねた。
「もしかしたら、まずいことになってるかもしれない…」
「まずいこと?
ま、まさか…マージになにか?」
「まだわからないが…」
しばらくすると、宿の主人が女将と共に慌てた様子で戻って来た。
「マージが…マージがどこにもいないんです!」
「な、なんだって?
マージになにかあったんですか?」
「なにかって…まさか…いや、そんなことは…」
「何か思い当たることがあるんですか?」
「実は、先日、ケネス様が来られて、それで結婚の申し込みにお返事をしたんですが…」
マージの父親は、隣の妻の顔色をうかがうように小さな声でそう言った。
「ほら、ごらん!
やっぱりあの子は気が進まなかったんだ!」
「そんなことないさ。
マージは自分で結婚すると言ったんだから。」
「ケネス様には借金があるし、ハリー、あんたがこの町を出て行ったりするからそれであの子は…
ま、まさか、あの子…ケネス様と結婚するのがいやさに…!!」
そう呟いたマージの母親の顔から血の気がひいていく…
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
天使からの贈り物・決意
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
単細胞の石好き男・ジュリアンと、石の精霊・エレスの不思議な旅物語・第5弾!
旅の途中でジュリアンが知り合ったのは、ラリーとスージーという仲の良い兄妹だった。
もうじき結婚することが決まっていたスージーの身に、とんでもないことが起きて…
天使からの贈り物・誤算
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ジュリアンとエレスの旅物語・第4弾です。
ある町で、ジュリアンはネイサンとポールという二人の炭鉱夫と仲良くなった。
その出会いは、ジュリアンに深い心の傷を与えることに…
天使の探しもの
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
創造主との賭けにより、身体を二つに分けられ、一切の能力をも奪われて地上に落とされた天使・ブルーとノワールは、遠く離れた場所にいた。
しかし、天界に戻るためには、二人が出会わなければならない。
二人は数々の苦難を乗り越え、そして……
※表紙画は詩乃様に描いていただきました。
天使からの贈り物・衝動
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ある時、ジュリアンが掘り出したのは、とても見事なエレスチャルだった。
しかも、そのエレスチャルには石の精霊が棲んでいて……
シリーズ第1弾です。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる