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偽り

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「どうかなさったんですか?」

けたたましく階段を駆け下りたジュリアンに、マージが声をかけた。



「あ…マージ…
実はな…ハリーが…あ……」

「ハリーが?ハリーがどうかしたんですか?」

ジュリアンはついうっかりと口を滑らせてしまったことを後悔したがもう遅い…




「マージ…実は、ハリーが町を出ていってしまったんだ…」

「ハリーが、この町を?
そ、そんな…なぜ?なぜなんですか?」

「ハリーのおふくろさんが病気で、おふくろさんの治療のために温泉の近くに行こうとしてたみたいなんだけど、思い当たる場所はないかい?」

「わ…私…そんなことまったく知りませんでした。
ハリーのお母さんがご病気だってこともなにも…
ジュリアンさん、あなたはなぜそんなことをご存知なんですか?」

「あぁ、ちょっとしたことでハリーと知り合ってな。
でも、こんな早くに出て行くなんて思ってなかったから、俺も驚いてるんだ…」

「ハリー…ひどい…
ひどいわ。
そんなこと、一言も私に言ってくれないなんて…」

「あ!マージ!!」



マージは涙に濡れた瞳を潤ませながら、店の奥へ走って行った。



(まいったな…
これじゃあ、この前と全く同じじゃないか…
とにかく、マージから目を離さないようにしないとな…)



それからのジュリアンは、一日の大半をマージに貼りつき、注意深く観察を続けた。
マージは、ハリーのことで傍目からもはっきりとわかるほどひどく沈んでる様子だったが、それでも、なんとか宿屋の仕事はこなしている。

それから半月程が経ち、このあたりにハリケーンが近付いて来ているとの話が飛びこんで来た。



(ヤバイ!
ついにあの日が来やがったか…!)



噂通り、雨風はだんだんと激しさを増して来ている。



「ちょっと、外の様子を見てくる。」

「なんだ、こんな時に…」

「今はまだそれほどじゃないからな。
マージが流された川を見てこようと思ってな。」



そう言って外に出たジュリアンはそこで思いがけない人物に再会した。
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