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side 香織

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 (母さん、ごめんね…
必ず返すから……)



 次の日、母さんがお風呂に入ってる隙に部屋に入り、母さんの通帳とはんこを持ち出した。
かなりくたびれた通帳を開くと、たいてい1000円か2000円の入金、一番多い時で5000円の入金が一回だけで、でも、少ない年金から毎月欠かさず貯金がなされていて、その額は50万近くになっていた。
それを見ると、ひどく胸が痛んだ。
 何年もかかってコツコツ貯めたことがわかるから。
そんなお金を私は今、勝手に使おうとしている。
 全く酷い人間だと思った。
しかも、予想外の金額にどこか喜んでいる私までいたのだから。



 (でも、私が結婚して幸せになれば、母さんだって喜んでくれるはず。
そうよ…智君のお母さんが元気になったら、またお店を始めて稼ぐ事も出来るんだし、そうなったらもう入院費もいらない。
このくらいのお金、すぐに返せるわ。)



 私は罪悪感を振り払うかのように、そんなことを考えた。
そうだ…利子をつけて返せば良い。
それに、事情を話せばきっと母さんだってわかってくれるはず……



そんな都合の良い話を自分に言い聞かせた。



これで70万近くの額はなんとか確保出来たけど、あと30万をどうするか…だった。



 昔、母さんが入院した時に、金融会社だからお金を借りたことで我が家は大変なことになった。
 金利はどんどん膨らんで、あっという間にとんでもない額になってしまう……
だから、それだけはしたくなかったのだけど、私には30万ものお金を貸してもらえるような友達はいなかった。



 (大丈夫よ…すぐに返せば、そんなにたいしたことにはならないわ!)



 私は次の日、50万のお金を借りた。
とりあえず、これでお母さんのお店はなんとかなる!
そう思うと、それまで感じてた怖さもすべて吹き飛んだ。
そして、そのお金を持って、私は智君に会いに向かった。
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