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side 香織

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 「えっ……!
お店が……!?」


ようやくすべてが落ち着くかと思われた頃、また新たな問題が起こった。
お母さんのお店が入ってたビルが、老朽化で取り壊されることになったという……



「母さん、それを聞いた途端、ものすごく気落ちしてしまってね…
せっかく退院の話まで出てたのに、また具合が悪くなってるんだ……」

 「そんな……
どこか、またお店が開けるような物件はないの?
 今のお店から近いところで……」

 「あるにはあるよ。
 今の所から目と鼻の先の距離に、すごく良い物件があるにはあるんだ。
でも……権利金やなんやでまたお金がかかる……」

それは当然の話だ。
 新たにお店を借りるとなったら、またずいぶんとお金はかかるだろう。



 「どのくらいかかるの?
とりあえず、最低限では……」

 「そうだね……最低でも100万くらいはかかるかな。
 無理だよね…いくら頑張ったところで100万なんてとても用意出来る額じゃない。」

 「100万……」


 少し前ならともかく、今、私の通帳には20万弱しか残っていない。
 100万の壁はすごく高い。
でも…ここでお母さんが気力を失って、体調が回復しなかったら、入院費もかかるし……
なによりも、私と智君の結婚がもっと先のことになってしまう…!



そう思うと、何が何でも100万円を工面しなければならない気がした。



 「智君、私に任せて。
なんとかするから……」


なんとか出来る目処も立ってないのに、私はそんなことを口走っていた。 
 
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