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side 香織
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「あ…あぁっ……」
「君が心配するようなことじゃないから……
今まで通り、僕にメールをくれるだけで良いから……」
私は強く抱きしめられ、智君は私の耳元でそう囁いた。
それは、いつもとは違う沈んだ声で……
言葉のニュアンスから考えても何か事情がありそうだと、頭のどこかでぼんやりと考えながらも、とにかくびっくりすることが続いたから、何かを言うってことが出来なかった。
「かおり…ごめんね。
びっくりさせちゃった?」
「う、うん……ちょっとね。」
本当はちょっとなんてもんじゃなかった。
気を抜いたら、その場にへなへなと座り込んでしまいそうになるほど、足も震えてた。
「……ちょっと歩こうか?」
光で溢れた空間を、私は智君と手を繋いで歩いた。
その場にいる男性の誰よりも格好良い智君と……
夢じゃないかって思った。
その場所も、智君も、さっきのキスも……
どれも、こんな私には似つかわしくないものばかりだったから。
「う~ん、良い風。
あ、かおり…寒くない?」
「ありがとう、大丈夫だよ。」
智君の優しさに、思わず顔がほころぶ。
「あぁ……空のイルミネーションも綺麗だね!」
智君は、夜空を見上げながら、そう呟いた。
こんな素敵な人と、デートしてるなんて……
もしかしたら、長い間、真面目に働いて来たご褒美なんだろうか?
星を見ていたら、ふと、そんな想いが頭をよぎった。
夢なら夢で構わない……
でも、それなら、もう少しだけ覚めないで。
智君とのこの時間を出来るだけ長く楽しませて。
智君に寄り添いながら、私は星にそんな願いをかけた。
「君が心配するようなことじゃないから……
今まで通り、僕にメールをくれるだけで良いから……」
私は強く抱きしめられ、智君は私の耳元でそう囁いた。
それは、いつもとは違う沈んだ声で……
言葉のニュアンスから考えても何か事情がありそうだと、頭のどこかでぼんやりと考えながらも、とにかくびっくりすることが続いたから、何かを言うってことが出来なかった。
「かおり…ごめんね。
びっくりさせちゃった?」
「う、うん……ちょっとね。」
本当はちょっとなんてもんじゃなかった。
気を抜いたら、その場にへなへなと座り込んでしまいそうになるほど、足も震えてた。
「……ちょっと歩こうか?」
光で溢れた空間を、私は智君と手を繋いで歩いた。
その場にいる男性の誰よりも格好良い智君と……
夢じゃないかって思った。
その場所も、智君も、さっきのキスも……
どれも、こんな私には似つかわしくないものばかりだったから。
「う~ん、良い風。
あ、かおり…寒くない?」
「ありがとう、大丈夫だよ。」
智君の優しさに、思わず顔がほころぶ。
「あぁ……空のイルミネーションも綺麗だね!」
智君は、夜空を見上げながら、そう呟いた。
こんな素敵な人と、デートしてるなんて……
もしかしたら、長い間、真面目に働いて来たご褒美なんだろうか?
星を見ていたら、ふと、そんな想いが頭をよぎった。
夢なら夢で構わない……
でも、それなら、もう少しだけ覚めないで。
智君とのこの時間を出来るだけ長く楽しませて。
智君に寄り添いながら、私は星にそんな願いをかけた。
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