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side 優一
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「なんとか出来たね!」
僕もなっちゃんも、こういうことには不慣れだったから、うまく出来てるかどうかはわからないけど、とにかく買ってきた苗を全部植え付けた。
最初は、手が汚れないように恐る恐るやってたけど、そんなことは気にせずに土を触るなっちゃんや小太郎を見て、全部が植え終えた頃には、僕の手も茶色くなっていた。
考えてみれば土を触ったのなんて、子供の時以来だ。
「ねぇ、パパ……来週、じゃがいも出来る?」
「来週はまだ無理だな。」
「じゃあ、来月?」
「う~ん…そうだな。そのくらいには出来てるんじゃないかな?」
僕にはどのくらいでじゃがいもが出来るのかわからなかったから、適当に答えた。
「優一~!」
なっちゃんが物置の前で手招きする。
「いっぱいあった。」
のぞくと、そこには土や肥料、ふるいや、その他にもなんだかよくわからないものがたくさん入っていた。
「……母さん、まだまだたくさん植えるつもりだったんだね。」
なっちゃんのその言葉に、胸が詰まった。
まだ六十を少し超えたばかり。
「もう年だから…」なんて口では言ってはいたけど、二人とも特別悪いところはなかったし、やりたいことはまだまだいっぱいあったと思う。
この庭だって……
「優一……母さんの代わりに、私達がここを花でいっぱいにしようよ。
母さん、きっと喜んでくれるよ!」
僕は黙って頷いた。
一言でも発したら、きっと涙がこぼれてたから。
「ママー!自転車の練習ー!」
「え…ちょっと休んでから行こうよ!」
「今行きたい!」
小太郎はすでに今朝届いた自転車を持って、門の前に立っていた。
「あ、待って!一人でいっちゃ危ないでしょ!
じゃあ、優一…私達、公園に行って来るから。」
なっちゃんも自転車を持って、慌てて小太郎の後を追いかけた。
「なんとか出来たね!」
僕もなっちゃんも、こういうことには不慣れだったから、うまく出来てるかどうかはわからないけど、とにかく買ってきた苗を全部植え付けた。
最初は、手が汚れないように恐る恐るやってたけど、そんなことは気にせずに土を触るなっちゃんや小太郎を見て、全部が植え終えた頃には、僕の手も茶色くなっていた。
考えてみれば土を触ったのなんて、子供の時以来だ。
「ねぇ、パパ……来週、じゃがいも出来る?」
「来週はまだ無理だな。」
「じゃあ、来月?」
「う~ん…そうだな。そのくらいには出来てるんじゃないかな?」
僕にはどのくらいでじゃがいもが出来るのかわからなかったから、適当に答えた。
「優一~!」
なっちゃんが物置の前で手招きする。
「いっぱいあった。」
のぞくと、そこには土や肥料、ふるいや、その他にもなんだかよくわからないものがたくさん入っていた。
「……母さん、まだまだたくさん植えるつもりだったんだね。」
なっちゃんのその言葉に、胸が詰まった。
まだ六十を少し超えたばかり。
「もう年だから…」なんて口では言ってはいたけど、二人とも特別悪いところはなかったし、やりたいことはまだまだいっぱいあったと思う。
この庭だって……
「優一……母さんの代わりに、私達がここを花でいっぱいにしようよ。
母さん、きっと喜んでくれるよ!」
僕は黙って頷いた。
一言でも発したら、きっと涙がこぼれてたから。
「ママー!自転車の練習ー!」
「え…ちょっと休んでから行こうよ!」
「今行きたい!」
小太郎はすでに今朝届いた自転車を持って、門の前に立っていた。
「あ、待って!一人でいっちゃ危ないでしょ!
じゃあ、優一…私達、公園に行って来るから。」
なっちゃんも自転車を持って、慌てて小太郎の後を追いかけた。
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