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015:今はここで眠りたい
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そこはとても気持ちの良い森だった。
木漏れ日が射し、楽しげな小鳥達の声や、遠くに小川のせせらぎが聞こえる。
心地良い風は、セスの頬をなで、長くなった髪をなびかせた。
(あの森とはやっぱり全然違う…)
セスは立ち止まり、振り返る。
そこに今歩いて来た道があることを確かめ、セスは苦い笑いを漏らした。
(そうか、俺はこっちだけじゃなく、今度はこっちにも行けるんだな。
どっちに行くのも俺の自由なんだ…)
そんなつまらないことが、セスの胸を躍らせた。
足取りも軽くなり、まるで飛び跳ねるようにセスはその森を進んで行く。
胸につかえていた様々な想いも今は忘れ、セスは心を解放して自然の優しさに身を任せた。
久し振りに思い出した満ち足りた気持ちに、セスは不意に喉の渇きを感じた。
(水の音…さっきより近くなってる…)
セスは水を求め、そのまま歩き続けた。
しばらく歩き続けると、やがて、セスの目の前に小さな泉が現れた。
その泉の中央の宙には、白羽扇を優雅に動かす者が浮かんでいた。
(う…浮かんでる…何者なんだ!?)
セスは妖しげな者の存在に身を固くする。
「ようこそ…」
紡がれた低い声と共に、顔を上げたフォルテュナの瞳が大きく見開かれた。
「フォ…フォルテュナじゃないか!」
「セス…なぜ、君がここに…!」
二人は、お互いみつめあい、思い掛けない再会にただただ驚くばかりだった。
「フォルテュナ…無事だったんだな…」
フォルテュナの様子を見て、自分の考えていたことが全くの見当違いだったことに気付き、セスは身体から力が抜けるのを感じた。
「……もしかして、君は僕を探しに来てくれたの?」
「え…あぁ……うん、まぁな。
俺……馬鹿だな……
……あぁ、そうだったのか…
あんたは自分の意志で…それなのに、俺は、あんたが俺の代わりに誰かにかどわかされたんだと勘違いして…」
「セス…僕は自分の意志で戻ったわけじゃないんだ。
言うなれば『戻された』だね。
僕は、突然、あの世界に連れて行かれ…そして、また戻された。
自分の意志で戻ると決めたのなら、いくらなんでも君に黙っては去らないよ。」
「……そうだったのか…
……それにしても……」
セスは、あらためてフォルテュナを上から下までじっくりと眺め透かす。
木漏れ日が射し、楽しげな小鳥達の声や、遠くに小川のせせらぎが聞こえる。
心地良い風は、セスの頬をなで、長くなった髪をなびかせた。
(あの森とはやっぱり全然違う…)
セスは立ち止まり、振り返る。
そこに今歩いて来た道があることを確かめ、セスは苦い笑いを漏らした。
(そうか、俺はこっちだけじゃなく、今度はこっちにも行けるんだな。
どっちに行くのも俺の自由なんだ…)
そんなつまらないことが、セスの胸を躍らせた。
足取りも軽くなり、まるで飛び跳ねるようにセスはその森を進んで行く。
胸につかえていた様々な想いも今は忘れ、セスは心を解放して自然の優しさに身を任せた。
久し振りに思い出した満ち足りた気持ちに、セスは不意に喉の渇きを感じた。
(水の音…さっきより近くなってる…)
セスは水を求め、そのまま歩き続けた。
しばらく歩き続けると、やがて、セスの目の前に小さな泉が現れた。
その泉の中央の宙には、白羽扇を優雅に動かす者が浮かんでいた。
(う…浮かんでる…何者なんだ!?)
セスは妖しげな者の存在に身を固くする。
「ようこそ…」
紡がれた低い声と共に、顔を上げたフォルテュナの瞳が大きく見開かれた。
「フォ…フォルテュナじゃないか!」
「セス…なぜ、君がここに…!」
二人は、お互いみつめあい、思い掛けない再会にただただ驚くばかりだった。
「フォルテュナ…無事だったんだな…」
フォルテュナの様子を見て、自分の考えていたことが全くの見当違いだったことに気付き、セスは身体から力が抜けるのを感じた。
「……もしかして、君は僕を探しに来てくれたの?」
「え…あぁ……うん、まぁな。
俺……馬鹿だな……
……あぁ、そうだったのか…
あんたは自分の意志で…それなのに、俺は、あんたが俺の代わりに誰かにかどわかされたんだと勘違いして…」
「セス…僕は自分の意志で戻ったわけじゃないんだ。
言うなれば『戻された』だね。
僕は、突然、あの世界に連れて行かれ…そして、また戻された。
自分の意志で戻ると決めたのなら、いくらなんでも君に黙っては去らないよ。」
「……そうだったのか…
……それにしても……」
セスは、あらためてフォルテュナを上から下までじっくりと眺め透かす。
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