あなたが私を選んだ理由に、断固異議あり！

１２７

「社長、会議のこと、忘れてやしませんか？」

岡林さんが、不意に声を上げた。



「あ…そうだったね。
奈美、至急、この書類のコピーを頼むね。」

「は、はいっ！」

この切り替えの早さは何なんだろう！？
樹生さんと離れるのがちょっとばかし名残惜しい気もしながら、私はコピー機のもとへ走った。



コピーをしながら、さっきのことを思い出す。
二階堂さん…一体、何のために来たんだろう？
樹生さんが電話にも出ないから、頭に来たのかな？
それで直接来た？
まだ諦めてなかったんだね…
やっぱり怖い人だな。



でも、二階堂さんがどんなに怖い人でも、私には頼もしい騎士がいてくれるから心配ない。
さっきの樹生さん…本当に頼もしかったなぁ。
なんだか照れくさくて、でも嬉しくて、顔が緩みっぱなしだよ。



（あ、大変！急がなきゃ！）



私はコピーした書類を持って、大急ぎで樹生さんのところへ走った。



後日聞いたところによると、二階堂さんは今回のことでお父さんにしばらくイギリスに行くように言いつけられたらしい。
それで、頭に来て、オフィスに来たみたいだった。
樹生さんを逆恨みして、文句でも言おうとしていたのかも。
でも、その前にたまたま私を見かけて、かっと来たのかもしれないね。
あのビンタ…強烈だったもの。