上 下
32 / 73

32

しおりを挟む




 「……ん?あれ?今、何時だ?」

 長椅子で眠り込んでいたエイダンが目を覚ました。



 「まだ夜中だ。」

 「え?あ…本当だ。」

 柱時計を見て、エイダンが呟く。



 「起こしてくれたら良かったのに。」

 「いや、気持ちよさそうに寝てたから…」

 「そうか…久しぶりに飲んだからな。」

エイダンは起き上がり、水差しの水を喉を鳴らして飲み干した。



 「あぁ~…なんかすっきりした。」

 「こんな時間に目を覚ましてもまずいだろ。
また寝たらどうだ?」

 「なんだか目が冴えてしまったよ。」

エイダンは笑ってそう言った。



 「あ、そういえば、昔、お前ん家に良く来てた貴族の娘…なんて言ったかな?」

 「……ミシェルのことか?」

 口にしたくない名前だったが、つい反射的に答えてしまった。
ごくなにげないふりをして…



「そうそう、ミシェルだったな。
 最近、ハワードがマンソンで彼女を見掛けたって言ってたぜ。」

 「マンソン……?」

 「あぁ、なんだか具合が悪そうだったって言ってた。
あの子、子供の頃から体が弱かったもんな。
でも、けっこう元気になってたのに、急に来なくなったよな。
 何かあったのか?」

 「え…あ、あぁ、良い医者がみつかったとかで…それで、うちには来なくなったんだ。」

 俺は咄嗟に嘘を吐いた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

【完結】夫もメイドも嘘ばかり

横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。 サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。 そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。 夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

処理中です...