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 「母さん!母さん!!」



 数日後…母さんは、崖の下で発見された。
その場所は、とても危険な場所だから、俺にも近付いてはいけないと言ってたのに、母さんはそこへ行ったようだった。



 母さんの葬儀が終わり…
俺は、母さんの存在がいかに大きかったかを痛感した。
まるで、支えがなくなったようだった。



 今まで俺の傍らにはいつも母さんがいた。
 嬉しい時も辛い時も…どんな時にも母さんがいた。
そう、ミシェルと会えなくなった時だって、母さんがいてくれたからきっとなんとか乗り越えられたんだ。
だけど、その母さんが逝ってしまった。



 何もする気になれなかった。
わけもなく涙がこぼれ、夜も眠れなくなった。



 数か月のうちに大切な人を続けて失ってしまい、俺の心の中には大きな穴がぽっかりと口を開けていた。



ある時…俺は、唐突に決断した。
この町を離れよう、と。
ここにいたら、ミシェルや母さんのことばかり考えてしまう。
 俺は、その悲しみを乗り越える自信がなかった。



 最初は、漠然とどこか遠くの町へと思ったけれど、急に、モルドへ行こうと思い立った。
モルドはこことは違って、治安も悪いらしい。
そんなところなら、もしかしたら、なんらかのトラブルに巻き込まれて死んでしまうかもしれない。



そう思ったら、なぜだかおかしくなって、俺は肩を震わせた。
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