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その後も遥香との会食は続いたが、気持ちが沈んだままだった。
遥香が判事の娘だということは聞いていたが、どうやら俺が思うよりもずっと、裕福な家庭に育っていたようだ。
ただ裕福なだけではなく、きっと幸せな家庭だったのだろう。
それを羨む気はないが、やはり、俺とは違い過ぎて合わないんじゃないかと…そんな風に思えた。
もしかしたら、それは俺の僻みなのか?
いや、そうではない。
現実なんだと思う。



俺は、ようやくここまで這い上がってきた。
そのことに誇りのようなものも感じている。
今は、やりがいのある仕事があり、金もある。
家も買ったし、母を引き取ることも出来たし、人に恥じることはこれと言ってないはずだ。



だが、俺の生い立ちは、変えられない。
貧しくて、惨めで、愛のない日々…
それは、忘れたくても忘れられない暗い記憶だ。



やはり、僻みだ…
そう思った。
愛に溢れ、豊かに育った遥香…
それに対して俺はどうだ?
そんなこと考えても仕方ないのに。
過去は変えられない。
それがわかっていながら、俺は自分の過去を恨んでいる。



「三沢先生…どうかなさったの?」

「え、あ…実はうっかりしてて、やらなきゃいけない大事な仕事があったことを思い出しまして…」

「まぁ…」

「すみません。申し訳ないですが、今日はこれで…」

俺は席を立った。
……最低だ。
俺は何をやってるんだ?
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