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運命の赤い花

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(何だろう?)



 駅に向かう道を自転車で進む途中、道路になにかが落ちていることに私は気が付いた。
 近くに来て、それが何だかわかった。
 花びらだった。
ピンクがかった赤い花の…
鮮やかなその色が、私の目に焼き付いた。



しばらくすると、そんなことも忘れていた。
だけど、またある時、風に乗って赤い花びらが舞っていて…
私の目は、今度もまたその花びらに釘付けになってしまった。



 (綺麗な花だな。
 一体、何の花なんだろう?)



 気にはなったけど、あたりを見渡してもそれらしき花はない。
おそらく風に運ばれて来たものだろうから、きっとこの近くにあるのだろうけど…



気になった私は、休みの日に花を探してあたりを歩き回った。
だけど、全然みつからない。
 疲れた私の目に、小さな喫茶店が映った。
 住宅の一部を喫茶店にしたようなお店だ。
 『ミセスバット』という店名にも興味を引かれ、私はその店に足を踏み入れた。



 「いらっしゃいませ。」



 穏やかに微笑むマスターに、なんだかきゅんとした。
 明らかに私の好きなタイプだ。もしかして、一目惚れ!?
 他にお客はいない。
いくら空いてるとはいえ、ひとりで四人掛けテーブルを使うのは気が引けたから、カウンターに座った。
お冷やとおしぼりがすっと出される。



 「えっと……」

 「ハーブティーはいかがですか?」

 「え?ハーブティーがあるんですか?」

 「はい、いろいろと。」

 「じゃあ……ラベンダーはありますか?」

 「はい、ございますよ。アイスでよろしいですか?」

 「はい。」



だめもとで言ってみたラベンダーティーがあるとは、なんだか嬉しくてテンションがあがった。



 「お待たせしました。」

 美しい薄紫色のラベンダーティは、とても香しい香りを放っていた。



 「あの…こちらの店名のミセスバットって…」

 「あぁ、前のオーナーさんが付けたんです。」

 「そうなんですか、それじゃあ、語源なんてわからないですよね?」

 「ブーゲンビリアの品種名なんですよ。」

 「ブーゲンビリア?」

 私が小首を傾げたら、マスターは私を手招きして、店の奥に連れて行った。



 「あれです。」

 「あっ!」



 窓からは庭が見えた。
そこにあったのは、背の高い赤い花。
 私が探していたあの花だってすぐにわかった。



 「この花…ブーゲンビリアっていうんですか?」

 「はい、そうなんです。って、僕もここを買ってから知ったんですけどね。
とても綺麗な花だし、たいして手入れをしなくても咲いてくれるんですよ。」

 「それは良いですね。」

まるで、この花が素敵な縁を結んでくれたみたい…
独りよがりな恋の予感に、私の胸はときめいた。

 
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