364 / 401
花束
1
しおりを挟む
(なかなか難しいもんだな…)
ここのところ僕は浮かれている。
それは、山本さんが、現在独身だと知ったからだ。
既婚者だとばかり思っていたから、そうじゃないとわかった時は、本当に嬉しかった。
子供がいることも、全然気にならないと言ったら嘘になるけれど、そんなことよりも何よりも、彼女が独身だということが勝っていた。
それはつまり、僕にもチャンスはあるということだから。
浮かれた僕は、今日は花を買って来た。
通りがかった花屋で見たピンクの薔薇を見た時、この花を山本さんにあげたいと思った。
だけど、突然そんなことをしたら、山本さんも驚くだろう。
だから、店に飾ることにした。
そもそも、この僕が花を買うなんて、絶対にどうかしている。
山本さんのことで、浮かれまくっている証拠だな。
花屋の店員さんに見繕ってもらって、色鮮やかな花束を作ってもらい、それをそのまま花瓶にぶちこんだんだけど、やっぱりどうもバランスが悪いような気がする。
(ま、いっか。)
考えたところで、センスのない僕にはうまくは活けられないだろう。
僕は、店を開ける準備に取り掛かった。
*
「まぁ、綺麗なお花ですね!」
山本さんは、今日もランチを食べに来てくれて…
そして、一番に花のことに気付いてくれた。
「あなたにぴったりのお花だと思って…」
そんなことが、僕に言えるはずがない。
「花屋さんを通りがかったら、目につきまして。
お店に飾ったら、綺麗かな?と思って買って来たんですが、なんせ活けるのがへたくそで…」
「そんなことはないと思いますよ。
でも、少しだけ直しても良いですか?」
「はい、ぜひお願いします。」
「はさみはありますか?」
「はい、ちょっと待って下さいね。」
僕がキッチンばさみを手渡すと、山本さんはくすりと笑い…
あ、そうか、彼女が言ったのは花ばさみのことだと気が付いた。
でも、僕は花ばさみなんて持ってないから、曖昧に笑って誤魔化した。
*
「あぁ、素敵です!どうもありがとうございます!」
「いえ…お粗末様です。」
彼女がちょっと手を加えただけで、花瓶の花は見違えるようになった。
山本さんはセンスが良い。
花を活けてもらったお礼に…と、今日はランチ代を受け取らなかった。
だけど、それは余計なことだったと後で思った。
そんなことよりも、何かプレゼントでもすれば良かったのに…
いや、今からでも遅くはないはずだ。
花を活けてもらったことを口実に、何か、彼女にプレゼントしよう!
そう思うと、僕の胸は高鳴った。
ここのところ僕は浮かれている。
それは、山本さんが、現在独身だと知ったからだ。
既婚者だとばかり思っていたから、そうじゃないとわかった時は、本当に嬉しかった。
子供がいることも、全然気にならないと言ったら嘘になるけれど、そんなことよりも何よりも、彼女が独身だということが勝っていた。
それはつまり、僕にもチャンスはあるということだから。
浮かれた僕は、今日は花を買って来た。
通りがかった花屋で見たピンクの薔薇を見た時、この花を山本さんにあげたいと思った。
だけど、突然そんなことをしたら、山本さんも驚くだろう。
だから、店に飾ることにした。
そもそも、この僕が花を買うなんて、絶対にどうかしている。
山本さんのことで、浮かれまくっている証拠だな。
花屋の店員さんに見繕ってもらって、色鮮やかな花束を作ってもらい、それをそのまま花瓶にぶちこんだんだけど、やっぱりどうもバランスが悪いような気がする。
(ま、いっか。)
考えたところで、センスのない僕にはうまくは活けられないだろう。
僕は、店を開ける準備に取り掛かった。
*
「まぁ、綺麗なお花ですね!」
山本さんは、今日もランチを食べに来てくれて…
そして、一番に花のことに気付いてくれた。
「あなたにぴったりのお花だと思って…」
そんなことが、僕に言えるはずがない。
「花屋さんを通りがかったら、目につきまして。
お店に飾ったら、綺麗かな?と思って買って来たんですが、なんせ活けるのがへたくそで…」
「そんなことはないと思いますよ。
でも、少しだけ直しても良いですか?」
「はい、ぜひお願いします。」
「はさみはありますか?」
「はい、ちょっと待って下さいね。」
僕がキッチンばさみを手渡すと、山本さんはくすりと笑い…
あ、そうか、彼女が言ったのは花ばさみのことだと気が付いた。
でも、僕は花ばさみなんて持ってないから、曖昧に笑って誤魔化した。
*
「あぁ、素敵です!どうもありがとうございます!」
「いえ…お粗末様です。」
彼女がちょっと手を加えただけで、花瓶の花は見違えるようになった。
山本さんはセンスが良い。
花を活けてもらったお礼に…と、今日はランチ代を受け取らなかった。
だけど、それは余計なことだったと後で思った。
そんなことよりも、何かプレゼントでもすれば良かったのに…
いや、今からでも遅くはないはずだ。
花を活けてもらったことを口実に、何か、彼女にプレゼントしよう!
そう思うと、僕の胸は高鳴った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。
なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。
そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。
そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。
彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。
それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。
美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する
くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。
世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。
意味がわからなかったが悲観はしなかった。
花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。
そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。
奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。
麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。
周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。
それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。
お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。
全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました
うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。
そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。
魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。
その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。
魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。
手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。
いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。
ショートショートのお茶漬け
rara33
現代文学
お茶漬けのようにサラサラと気軽に楽しめるような、基本5分以内で読めるショートショート集です。
原則一話完結ですが、次章に続く場合はその旨を章タイトルに明記します。
お好きな章からお気軽に読んでいただければ、本当に嬉しいです(^^)
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(追記) 毎日1話更新の予定です。
※他の投稿サイトにて本人名義で投稿した拙作を、適宜アレンジしたものです。
※小説家になろう様でも連載中ですが、アルファポリス様掲載分は、女性の読者様向けの作品をメインに投稿させていただくつもりです。
聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?
渡邊 香梨
ファンタジー
コミックシーモア電子コミック大賞2025ノミネート! 11/30まで投票宜しくお願いします……!m(_ _)m
――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】
12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます!
双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。
召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。
国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。
妹のお守りは、もうごめん――。
全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。
「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」
内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。
※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。
【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる