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水晶のダイヤモンド

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「葉月、お誕生日おめでとう!」

そう言って、優君は私に小さな紙袋を差し出した。



 「ありがとう!優君。」



あぁ…優君は名前通り、本当に優しい。
だからこそ、胸が痛むよ。



 「良かったら、開けてみて。」

 「う、うん…」

 紙袋の中に入ってたのは、小さな箱…
うっ、ますます胸が痛む…



「うわぁ…綺麗…」

 箱の中に入ってたのは、キラキラ輝くダイヤモンドの指輪だった。



 (優君……覚えててくれたんだ。)



しかも、けっこう大きい石だから、相当高いと思う。
 優君…実家に仕送りもしてるのに、大丈夫なのかな?
そんなことを思ったら、罪悪感に押しつぶされそうになった。



 優君と知り合ったのは、三か月程前のこと。
 友達に誘われた合コンで、優君と出会った。
なぜだかわからないけれど、優君は私のことが気に入ったらしく、早速、連絡先を訊かれて…



優君のことは特に好きってわけでもなかったけど、浮気者の彼氏と別れた直後で、気持ちがかなり荒んでる時だったから、私はあっさりと優君に連絡先を教えた。
そう、半ば自棄になってて、どうでも良かったんだ。
お酒にも酔ってたこともあり、私はその時、優君に馬鹿なことを言った。



 「私ね、4月4日が誕生日なんだ。
だから、その日には誕生石の指輪をちょうだいね。」

 「うん、わかった。」



 誕生日が4月4日なんて嘘。
 本当の誕生日は8月8日だ。
でも、4月の誕生石はダイヤモンドだから、そんな嘘を吐いた。
 12か月の誕生石の中で一番高い石だから。
どうせ、本気で付き合うつもりなんてなかったし、すぐに別れるにしても、万一、もらえたらラッキー!っていう邪な気持ちだった。



ところが、いざ、優君と連絡を取りあってみると、予想以外に真面目で良い人で…
今までろくな男と付き合ったことがなかったから、戸惑うことばかり。
そのうち、本気で優君のことが好きになって来て、嘘の誕生日のことも忘れてくれてたら良いなぁ…と思ってたんだけど、優君はしっかり覚えてて…



「気に入ってもらえた?」

 「う、うん。でも、大丈夫なの?こんな高いもの…」

 「……ごめん。」

 「え?……何が?」

 「これ…ハーキマー・ダイヤモンドなんだ。」

 「え?」

 戸惑う私に、優君はとても申し訳なさそうな顔をした。



 「これ…ハーキマー・ダイヤモンドって言うんだけど、ダイヤモンドじゃなくて水晶なんだよ。
ごめんね、今の僕にはこれくらいしか買えなかった。」

 「え!?これが水晶?」

 「うん、僕も知らなかったからダイヤモンドの一種かと思ったんだ。
でも、水晶なんだって。
お店の人が水晶は4月の誕生石でもあるって教えてくれたんだ。
だからこれにした。
 来年はダイヤモンドが買えるように頑張るから、今年はこれで我慢してもらえないかな?」

 「優君……」



とっても言いにくいけど…こんな真面目な人を騙せない。
 今日は、正直に話そう。
 実は、今日は誕生日じゃないってことを。



そして、許してもらえたら…
これからもずっと一緒にいたいって、言おう…!

 
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