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ころころ

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(まったく、もう!みんな、どんだけ気合い入ってるんだ!)



 朝五時に起きて、花見の場所取りに来たっていうのに、すでに良い場所は取られていた。
 俺が取ったのは、ちょっと坂になったところだけど、まぁ、このくらいのことは我慢してもらわないとな。



それにしても、二年連続で場所取りをさせられるとは一体どういうことなんだ!
 本来なら今年は新入社員である徳井がするはずなのに、徳井の野郎、法事があるので休ませていただきます…なんて言いやがって。
 入社早々、法事だぁ?
そんなのどうせ嘘に決まってる。
 場所取りも嫌だし、花見も嫌だから、きっとそんな嘘を吐いて休んだんだ。
 本当に調子の良い奴だ!



イライラしても仕方がないが、それでもやっぱり腹が立つ。
みんなが来る時間まではまだ何時間もある。
それまで一体どうやって暇を潰そうか…
ここで出来ることといったら、せいぜい寝ることくらいか?



 (そうだな…少し寝るか…)



そんなことを考えていると、大きな荷物を持った女性が坂を上がっていくのが見えた。
そうだよな、今からじゃもうあんまり良い場所はない。
それにしても、女性に場所取りをさせるとは酷い話だ。
そんなことを思ったのは、その子が可愛かったせいかもしれない。



あんなカワイコちゃんと、一緒に花見が出来たなら、どれだけ楽しい花見だろう?
うちの課は、むさい男たちばっかりだ。
そして、怖いお局様がひとり…
徳井が来たがらないのも確かにわかる。



はぁ……



悲しい現実に、深い溜め息がこぼれた。



 (……ん?)



 何かが坂の上から転がって来る…しかも、いくつも。
たまごだ!
 俺はそれらを素早い動きでキャッチした!



 「やだ~!」

たまごの次に走って来たのは、さっきのカワイコちゃん。



 「あぁっ!」

 坂を駆け下りた反動で転びそうになる彼女を俺はがっしりと受け止めた。



 「大丈夫ですか?」

 「は、はい。あ…たまご!」

 「大丈夫ですよ。俺が全部受け取りました。」

 「あ、ありがとうございます!」



 彼女の職場は、女子社員が4名だけの小さなところだということだったので、ダメ元で、一緒に花見をしないかと誘ってみたら、あっさりOK!
 入社してまだ二年目の俺だけど、勝手なことをして!と怒りそうなのはお局様だけだ。
 他のみんなはきっと喜んでくれるはず。



 (ざまーみろ!)



 徳井の悔しがる顔を想像して、すっかり気が晴れた俺だった。

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