310 / 401
地獄ラーメン
1
しおりを挟む
鬼が島のメインストリートを一筋入った路地裏に、知る人ぞ知るラーメン店がありました。
『元祖・赤鬼ラーメン』というお店です。
「う~、さぶ。」
背中を丸めながら、青鬼さんがラーメン屋へ向かいます。
「らっしゃい!」
常連さんの青鬼さんが店の扉を開くと、威勢の良い声が返って来ました。
「よぉ、大将、久しぶり。」
金棒立てに金棒を置き、青鬼さんは片手を上げました。
「本当にひさしぶりだな。忙しかったのかい?」
「あぁ、ここんとこ、桃太郎が視察に来てたの知ってるだろ?
毎日接待でよぉ…」
「そりゃあ大変だったな。」
親し気に会話を交わしながら、青鬼さんはカウンターに座りました。
「じゃあ、いつものラーメンと餃子、それとチャーハンと…」
「実は、新作ラーメンを作ったんだ。
良かったら、食べてみてくれないか?」
「なに、新作だって?
そりゃあ、楽しみだ!
ぜひ、食べさせてくれ!」
「あいよ!こんな寒い日にはぴったりのラーメンだぜ。」
大将はにやりと笑いました。
青鬼さんは新聞を広げ、鼻歌を歌いながら、ラーメンが出来るのを待ちました。
「へい、お待ち!」
「おぉっ!これは!?」
青鬼さんは差し出されたラーメンに目を丸くしました。
なぜなら、そのラーメンは大将の顔と同じくらい真っ赤だったからです。
「へへっ、これ、地獄ラーメンって名付けたんだ。
寒さなんて吹き飛んじまうぜ!」
「そ、そうか。じゃあ、いただくとするか。」
青鬼さんは、恐る恐るラーメンをすすりました。
「ぎゃあっ!か、辛いっ!」
青鬼さんの顔からは、汗が噴き出していました。
「止まっちゃだめだ!
一気に行け、一気に!」
「わ、わかった。」
大将に言われるままに、青鬼さんはラーメンをすすりました。
青鬼さんは滝のような汗を流し、その青い顔や体はいつしか紫色に変わっていました。
「さすがだな!」
大将もいささか驚いた様子です。
青鬼さんは、麺を食べ切り、どんぶりを持って真っ赤なスープをごくごくと飲み干します。
大将は、その様子に目を大きく見開きました。
「う、うぉーーー!」
スープを飲み干した青鬼さんは、天井に届きそうな火柱を吐きました。
「か、か、辛い!し、死ぬーーー!」
青鬼さんはそのまま店の外に飛び出し、表に積もった雪を掴んで口の中に放り込みました。
何度も何度もその動作を繰り返すうち、青鬼さんの顔は元の青色に戻っていきました。
「……大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ。
大将、これは絶対売れるぜ!」
青鬼さんは親指を立てて微笑みます。
大将は頷き、嬉しそうに微笑みました。
『元祖・赤鬼ラーメン』というお店です。
「う~、さぶ。」
背中を丸めながら、青鬼さんがラーメン屋へ向かいます。
「らっしゃい!」
常連さんの青鬼さんが店の扉を開くと、威勢の良い声が返って来ました。
「よぉ、大将、久しぶり。」
金棒立てに金棒を置き、青鬼さんは片手を上げました。
「本当にひさしぶりだな。忙しかったのかい?」
「あぁ、ここんとこ、桃太郎が視察に来てたの知ってるだろ?
毎日接待でよぉ…」
「そりゃあ大変だったな。」
親し気に会話を交わしながら、青鬼さんはカウンターに座りました。
「じゃあ、いつものラーメンと餃子、それとチャーハンと…」
「実は、新作ラーメンを作ったんだ。
良かったら、食べてみてくれないか?」
「なに、新作だって?
そりゃあ、楽しみだ!
ぜひ、食べさせてくれ!」
「あいよ!こんな寒い日にはぴったりのラーメンだぜ。」
大将はにやりと笑いました。
青鬼さんは新聞を広げ、鼻歌を歌いながら、ラーメンが出来るのを待ちました。
「へい、お待ち!」
「おぉっ!これは!?」
青鬼さんは差し出されたラーメンに目を丸くしました。
なぜなら、そのラーメンは大将の顔と同じくらい真っ赤だったからです。
「へへっ、これ、地獄ラーメンって名付けたんだ。
寒さなんて吹き飛んじまうぜ!」
「そ、そうか。じゃあ、いただくとするか。」
青鬼さんは、恐る恐るラーメンをすすりました。
「ぎゃあっ!か、辛いっ!」
青鬼さんの顔からは、汗が噴き出していました。
「止まっちゃだめだ!
一気に行け、一気に!」
「わ、わかった。」
大将に言われるままに、青鬼さんはラーメンをすすりました。
青鬼さんは滝のような汗を流し、その青い顔や体はいつしか紫色に変わっていました。
「さすがだな!」
大将もいささか驚いた様子です。
青鬼さんは、麺を食べ切り、どんぶりを持って真っ赤なスープをごくごくと飲み干します。
大将は、その様子に目を大きく見開きました。
「う、うぉーーー!」
スープを飲み干した青鬼さんは、天井に届きそうな火柱を吐きました。
「か、か、辛い!し、死ぬーーー!」
青鬼さんはそのまま店の外に飛び出し、表に積もった雪を掴んで口の中に放り込みました。
何度も何度もその動作を繰り返すうち、青鬼さんの顔は元の青色に戻っていきました。
「……大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ。
大将、これは絶対売れるぜ!」
青鬼さんは親指を立てて微笑みます。
大将は頷き、嬉しそうに微笑みました。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
怒れるおせっかい奥様
asamurasaki
恋愛
ベレッタ・サウスカールトンは出産時に前世の記憶を思い出した。
可愛い男の子を産んだその瞬間にベレッタは前世の記憶が怒涛のことく甦った。
日本人ので三人の子持ちで孫もいた60代女性だった記憶だ。
そして今までのベレッタの人生も一緒に思い出した。
コローラル子爵家第一女として生まれたけど、実の母はベレッタが4歳の時に急な病で亡くなった。
そして母の喪が明けてすぐに父が愛人とその子を連れて帰ってきた。
それからベレッタは継母と同い年の義妹に虐げられてきた。
父も一緒になって虐げてくるクズ。
そしてベレッタは18歳でこの国の貴族なら通うことが義務付けられてるアカデミーを卒業してすぐに父の持ってきた縁談で結婚して厄介払いされた。
相手はフィンレル・サウスカールトン侯爵22歳。
子爵令嬢か侯爵と結婚なんて…恵まれているはずがない!
あのクズが持ってきた縁談だ、資金援助を条件に訳あり侯爵に嫁がされた。
そのベレッタは結婚してからも侯爵家で夫には見向きもされず、使用人には冷遇されている。
白い結婚でなかったのは侯爵がどうしても後継ぎを必要としていたからだ。
良かったのか悪かったのか、初夜のたったの一度でベレッタは妊娠して子を生んだ。
前世60代だった私が転生して19歳の少女になった訳よね?
ゲームの世界に転生ってやつかしら?でも私の20代後半の娘は恋愛ゲームやそういう異世界転生とかの小説が好きで私によく話していたけど、私はあまり知らないから娘が話してたことしかわからないから、当然どこの世界なのかわからないのよ。
どうして転生したのが私だったのかしら?
でもそんなこと言ってる場合じゃないわ!
あの私に無関心な夫とよく似ている息子とはいえ、私がお腹を痛めて生んだ愛しい我が子よ!
子供がいないなら離縁して平民になり生きていってもいいけど、子供がいるなら話は別。
私は自分の息子の為、そして私の為に離縁などしないわ!
無関心夫なんて宛にせず私が息子を立派な侯爵になるようにしてみせるわ!
前世60代女性だった孫にばぁばと言われていたベレッタが立ち上がる!
無関心夫の愛なんて求めてないけど夫にも事情があり夫にはガツンガツン言葉で責めて凹ませますが、夫へのざまあはありません。
他の人たちのざまあはアリ。
ユルユル設定です。
ご了承下さい。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
ショートショートのお茶漬け
rara33
現代文学
お茶漬けのようにサラサラと気軽に楽しめるような、基本5分以内で読めるショートショート集です。
原則一話完結ですが、次章に続く場合はその旨を章タイトルに明記します。
お好きな章からお気軽に読んでいただければ、本当に嬉しいです(^^)
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(追記) 毎日1話更新の予定です。
※他の投稿サイトにて本人名義で投稿した拙作を、適宜アレンジしたものです。
※小説家になろう様でも連載中ですが、アルファポリス様掲載分は、女性の読者様向けの作品をメインに投稿させていただくつもりです。
自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません
月野槐樹
ファンタジー
家族と一緒に初めて王都にやってきたソーマは、王都の光景に既視感を覚えた。自分が作ったゲームの世界に似ていると感じて、異世界に転生した事に気がつく。
自作ゲームの中で作った猫執事キャラのプティと再会。
やっぱり自作ゲームの世界かと思ったけど、なぜか全く作った覚えがない乙女ゲームのような展開が発生。
何がどうなっているか分からないまま、ソーマは、結構マイペースに、今日も魔道具制作を楽しむのであった。
第1章完結しました。
第2章スタートしています。
来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。
克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる