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地獄ラーメン

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鬼が島のメインストリートを一筋入った路地裏に、知る人ぞ知るラーメン店がありました。
 『元祖・赤鬼ラーメン』というお店です。



 「う~、さぶ。」

 背中を丸めながら、青鬼さんがラーメン屋へ向かいます。



 「らっしゃい!」

 常連さんの青鬼さんが店の扉を開くと、威勢の良い声が返って来ました。



 「よぉ、大将、久しぶり。」

 金棒立てに金棒を置き、青鬼さんは片手を上げました。



 「本当にひさしぶりだな。忙しかったのかい?」

 「あぁ、ここんとこ、桃太郎が視察に来てたの知ってるだろ?
 毎日接待でよぉ…」

 「そりゃあ大変だったな。」



 親し気に会話を交わしながら、青鬼さんはカウンターに座りました。



 「じゃあ、いつものラーメンと餃子、それとチャーハンと…」

 「実は、新作ラーメンを作ったんだ。
 良かったら、食べてみてくれないか?」

 「なに、新作だって?
そりゃあ、楽しみだ!
ぜひ、食べさせてくれ!」

 「あいよ!こんな寒い日にはぴったりのラーメンだぜ。」

 大将はにやりと笑いました。



 青鬼さんは新聞を広げ、鼻歌を歌いながら、ラーメンが出来るのを待ちました。



 「へい、お待ち!」

 「おぉっ!これは!?」

 青鬼さんは差し出されたラーメンに目を丸くしました。
なぜなら、そのラーメンは大将の顔と同じくらい真っ赤だったからです。



 「へへっ、これ、地獄ラーメンって名付けたんだ。
 寒さなんて吹き飛んじまうぜ!」

 「そ、そうか。じゃあ、いただくとするか。」

 青鬼さんは、恐る恐るラーメンをすすりました。



 「ぎゃあっ!か、辛いっ!」

 青鬼さんの顔からは、汗が噴き出していました。



 「止まっちゃだめだ!
 一気に行け、一気に!」

 「わ、わかった。」

 大将に言われるままに、青鬼さんはラーメンをすすりました。
 青鬼さんは滝のような汗を流し、その青い顔や体はいつしか紫色に変わっていました。



 「さすがだな!」

 大将もいささか驚いた様子です。
 青鬼さんは、麺を食べ切り、どんぶりを持って真っ赤なスープをごくごくと飲み干します。
 大将は、その様子に目を大きく見開きました。



 「う、うぉーーー!」

スープを飲み干した青鬼さんは、天井に届きそうな火柱を吐きました。



 「か、か、辛い!し、死ぬーーー!」

 青鬼さんはそのまま店の外に飛び出し、表に積もった雪を掴んで口の中に放り込みました。
 何度も何度もその動作を繰り返すうち、青鬼さんの顔は元の青色に戻っていきました。



 「……大丈夫か?」

 「あぁ、大丈夫だ。
 大将、これは絶対売れるぜ!」

 青鬼さんは親指を立てて微笑みます。
 大将は頷き、嬉しそうに微笑みました。

 
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