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大虎

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「おまえ……妖怪だったんだな!」

 「はぁ?」

 「今まで人間のふりしやがって!
 頭が三つも四つもあるじゃないか!気持ち悪い!」

 「……おいおい。」

 加奈子は据わった目をして、俺をにらみつける。



 (……まさか、こんなに酒癖が悪いとは…)



 最近は寒い日が続いたから、家で鍋をつつこうと言ったのは加奈子の方で…
会社の先輩から教えてもらったとかいう日本酒鍋を作ると言い出したのもこれまた彼女で…
そして、この様だ。



 最初は特に問題なかった。
 鍋に入れる肉類を炒めたり、野菜を切ったり、かいがいしく準備をして…



「さぁ、始めるわよ。」

そう言うと、彼女は日本酒の瓶を持って来て、鍋にどぼどぼと注ぎ込み…



「え!?日本酒鍋って、マジで日本酒で煮るのか?」

 「そうよ。」

 「って、大丈夫なのかよ。
お前、酒は強くないのに…」

 「馬鹿ね、何もこれを飲むわけじゃないし、煮てるうちにアルコールはどんどん飛んで行くから。」

 「へぇ、そうなんだ。」

そんな感じで鍋は始まり……



「美味しいね!」

 「日本酒の味は気にならないね。」

……なんてことを話しながら、仲良く食べていたのだけれど…
しばらくすると、彼女の態度は豹変した。



 「こら、妖怪!
 本当の頭はどれだ!」

すでに完全に酔っていた。
 酔いを覚ますため、水を飲ませようとしても彼女はなかなか言うことを聞かない。
しつこく俺を妖怪呼ばわりしては、にらんだり、大声で笑ったり、めちゃめちゃだ。



どうしたものかと、俺がほとほと困った頃…



加奈子は急に静かになった。
ふと見ると、その瞼はもうくっつきそうになっていて…
倒れかかる彼女をそっと抱き止め、そこに寝かしつけた。



さっきまでの悪態が嘘のよう…寝顔はまるで子供みたいに無邪気だ。



 (……日本酒鍋は、封印だな。)



 彼女にそっと毛布を掛けて、俺は残りの日本酒鍋を口に運んだ。
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