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許さない…
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「恭子、おめでとう!」
「お幸せに…!」
フラワーシャワーの祝福の中、私は今までの人生で最高の幸せを噛み締めていた。
(これからも、私は幸せになる…!
誰よりも幸せに…!)
*
「じゃあ、待ってるからね。」
「うん、頑張ってね。」
夫となった輝と私は手を振り合った。
結婚式を済ませて早々に、彼はイギリスに行ってしまった。
向こうでの仕事に着手するためだ。
私は現地の準備が整い次第、向こうに行くことになっている。
新婚旅行も、今はまだお預けだ。
でも、そんなこと構わない。
私は、梁瀬グループの御曹司と結婚したのだから。
貧しくて惨めで不幸だった過去の私とはおさらばだ。
晴れやかな私の心の奥底に、ほんの少しだけ暗い闇があった。
(……美弥子……悪く思わないでね。
私はただ勝っただけ。
勝つ者がいれば負ける者がいるのは当然のことなんだから…)
美弥子と私は幼馴染で…
同じ施設で、姉妹のように育った親友だ。
「恭子…紹介するね。
梁瀬輝さん…今、私達、お付き合いをしてるの。」
恥ずかしそうに頬を赤く染めて…
美弥子は、私に輝を紹介してくれた。
その時は、心から祝福した。
美弥子は晩生で、今まで付き合った人もいなくて…
だから、幸せになってほしいと思った。
美弥子はそれからどんどん綺麗になっていった。
着るものや身に付けるものが高価なものになり、雰囲気がどんどん変わっていった。
聞けば、それらはみな、輝からのプレゼントだということだった。
その時から少しずつ美弥子に対して嫉妬のようなものを感じるようになって…輝が梁瀬グループの御曹司だと知ってからは、その嫉妬は理不尽な憎しみに変わっていた。
私と同じ、不幸な星の下に生まれた美弥子が幸せになろうとしている…
その事実が、私を酷く苛立たせた。
許せない!美弥子だけ幸せになるなんて、そんなこと…
その想いが私の心を埋め尽くした。
それから、私は行動を起こした。
嘘を吐き、女の武器を使い…あらゆる手段を用いて、美弥子と輝の仲を引き裂いた。
目的を達成しても、私はそこで留まることが出来なかった。
輝を自分のものにしたいという野望にかられ…そして、私はついにそれを成し得た。
美弥子はきっと私を憎んでいることだろう。
でも、それでも構わない。
私は、美弥子との友情よりも輝を選んだのだから。
(さて…と。
あ、いけない!払うものがあったんだ。コンビニに行かなきゃ!)
私は暗い道をコンビニに向かって歩き始めた。
このあたりは大きなお屋敷の連なる高級住宅街で、長く続く緑道に人通りは少ない。
「あっ!」
暗い夜空に、ぼんやりと浮かぶ青白い炎…
鬼火だ!
子供の頃に聞いたことがある。
この世に未練を残した人の魂が、彷徨っているのだと。
私は立ち止まり、鬼火をみつめた。
『……許さない…』
「え!?」
私はあたりを見渡した。
でも、そこには私以外誰もいない。
『……絶対に…許さない……』
鬼火の色が青から赤に変わり、大きく燃えながら私の方に向かって来た。
「な、なにを言ってるの?
わ、私が何をしたって……」
逃げようと思うのに、恐怖で足がすくんでなかなか走れない。
その間にも、炎はさらに大きく燃え上がる。
今の声が美弥子だということは直感的にわかっていた。
でも、その事実を認めることが怖かった。
まさか、美弥子は……不吉な想像に体が震える。
「や、やめて…!」
必死の想いで私は足を動かし、鬼火から遠去かろうとした。
しかし、鬼火は燃えながら私の後を追って来る。
まるで私を焼き殺そうとでもするかのように…
私は流れる涙を拭うゆとりも後ろを振り向く勇気さえもなく、ただただ前を向いて走り続けた。
もう少し行けば、コンビニのある通りに出る。
鬼火がそこまで追いかけて来るはずがない。
(あと少し……)
その時、私の目の前が目も眩むような光に覆われた。
「あぁーーーーっ!」
***
「お幸せに…!」
フラワーシャワーの祝福の中、私は今までの人生で最高の幸せを噛み締めていた。
(これからも、私は幸せになる…!
誰よりも幸せに…!)
*
「じゃあ、待ってるからね。」
「うん、頑張ってね。」
夫となった輝と私は手を振り合った。
結婚式を済ませて早々に、彼はイギリスに行ってしまった。
向こうでの仕事に着手するためだ。
私は現地の準備が整い次第、向こうに行くことになっている。
新婚旅行も、今はまだお預けだ。
でも、そんなこと構わない。
私は、梁瀬グループの御曹司と結婚したのだから。
貧しくて惨めで不幸だった過去の私とはおさらばだ。
晴れやかな私の心の奥底に、ほんの少しだけ暗い闇があった。
(……美弥子……悪く思わないでね。
私はただ勝っただけ。
勝つ者がいれば負ける者がいるのは当然のことなんだから…)
美弥子と私は幼馴染で…
同じ施設で、姉妹のように育った親友だ。
「恭子…紹介するね。
梁瀬輝さん…今、私達、お付き合いをしてるの。」
恥ずかしそうに頬を赤く染めて…
美弥子は、私に輝を紹介してくれた。
その時は、心から祝福した。
美弥子は晩生で、今まで付き合った人もいなくて…
だから、幸せになってほしいと思った。
美弥子はそれからどんどん綺麗になっていった。
着るものや身に付けるものが高価なものになり、雰囲気がどんどん変わっていった。
聞けば、それらはみな、輝からのプレゼントだということだった。
その時から少しずつ美弥子に対して嫉妬のようなものを感じるようになって…輝が梁瀬グループの御曹司だと知ってからは、その嫉妬は理不尽な憎しみに変わっていた。
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その事実が、私を酷く苛立たせた。
許せない!美弥子だけ幸せになるなんて、そんなこと…
その想いが私の心を埋め尽くした。
それから、私は行動を起こした。
嘘を吐き、女の武器を使い…あらゆる手段を用いて、美弥子と輝の仲を引き裂いた。
目的を達成しても、私はそこで留まることが出来なかった。
輝を自分のものにしたいという野望にかられ…そして、私はついにそれを成し得た。
美弥子はきっと私を憎んでいることだろう。
でも、それでも構わない。
私は、美弥子との友情よりも輝を選んだのだから。
(さて…と。
あ、いけない!払うものがあったんだ。コンビニに行かなきゃ!)
私は暗い道をコンビニに向かって歩き始めた。
このあたりは大きなお屋敷の連なる高級住宅街で、長く続く緑道に人通りは少ない。
「あっ!」
暗い夜空に、ぼんやりと浮かぶ青白い炎…
鬼火だ!
子供の頃に聞いたことがある。
この世に未練を残した人の魂が、彷徨っているのだと。
私は立ち止まり、鬼火をみつめた。
『……許さない…』
「え!?」
私はあたりを見渡した。
でも、そこには私以外誰もいない。
『……絶対に…許さない……』
鬼火の色が青から赤に変わり、大きく燃えながら私の方に向かって来た。
「な、なにを言ってるの?
わ、私が何をしたって……」
逃げようと思うのに、恐怖で足がすくんでなかなか走れない。
その間にも、炎はさらに大きく燃え上がる。
今の声が美弥子だということは直感的にわかっていた。
でも、その事実を認めることが怖かった。
まさか、美弥子は……不吉な想像に体が震える。
「や、やめて…!」
必死の想いで私は足を動かし、鬼火から遠去かろうとした。
しかし、鬼火は燃えながら私の後を追って来る。
まるで私を焼き殺そうとでもするかのように…
私は流れる涙を拭うゆとりも後ろを振り向く勇気さえもなく、ただただ前を向いて走り続けた。
もう少し行けば、コンビニのある通りに出る。
鬼火がそこまで追いかけて来るはずがない。
(あと少し……)
その時、私の目の前が目も眩むような光に覆われた。
「あぁーーーーっ!」
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