238 / 401
美味しいごはん
1
しおりを挟む
「わぁ、すごいすごい!
いっぱい出てきたよ!」
雅也は、無邪気にそう言って、顔を綻ばせた。
「早く食べてみたいね。」
「……そうだね。」
私としてはちょっと複雑な想いだ。
このお米を作るのに、一体どのくらいの苦労があったのか、雅也にはきっとわかってないと思うから。
「ねぇ、今度はお米を作ってみない?」
うちで育てた野菜で作った料理は、私の両親にも雅也の両親にもすごく好評だった。
実った野菜は、見た目も味もスーパーで売ってるのと比べても遜色のない程の出来だった。
それは、偏に私の日々の努力のおかげだと思ってる。
雅也は、ほとんどなにもしてないんだから。
そりゃあ、三時間近くかけて毎日通勤してるのは気の毒だとは思うけど、田舎に住みたいって言い出したのは雅也だし、休みの日は疲れたって言って寝てばかりで、畑の事なんて何もしてくれなかったんだから。
なのに、今度は米?
そんなの無理無理!
「お米はさすがに無理でしょう。」
「それが無理じゃないんだ。
田んぼの貸し出しから、お米作りまで教えてくれる農家さんがいてね。
実は、もう頼んで来たんだ。」
「えーーーっ!?」
思った通り、今回も雅也はほとんどなにもしなかった。
田植えから、稲刈り…すべて私がやった。
田植えも稲刈りも、全部人力だから、腰が折れるんじゃないかって思うくらいの重労働だった。
農家さんは親切なおじさんで、なにもわからない私にとても丁寧に教えてはくれたけど…
なんで、私、こんなことやってるんだろう!?って、何度も思ったよ…
これもすべては雅也のせいなんだ!
刈り取った稲を天日干ししてから…
ようやく雅也が手伝うと言い出した。
三連休の日のことだ。
借りて来た脱穀機で、稲を脱穀する。
脱穀なんて、今までの作業に比べものにならないくらい楽な作業だから、雅也は遊びみたいににこにこしながらやっている。
「たくさん出来たね!」
「そうだね。」
「あぁ、これが収穫の喜びってやつか!」
雅也の言葉にイラっとしながらも、奥歯を噛み締めて私は微笑む。
なにもしてないくせに、何が収穫の喜びだ!
「私がどれだけ苦労して来たか、お前はわかってるのか~!」と、心の中でシャウトした。
*
「とってもおいしいね。」
「……うん。」
自分で作ったお米を食べていると、苦労の日々が思い出されて胸がいっぱいになった。
「こんなにおいしいご飯が食べられるのは、美里のおかげだね。」
「え?」
その一言で、今までの苦労が報われたような気がした。
あぁ、私ってなんて単純な女なんだろう。
今日のごはんはちょっとしょっぱいけど、最高の味だ。
来年もまた米を作ろうと…私は心の中でそんなことを思っていた。
いっぱい出てきたよ!」
雅也は、無邪気にそう言って、顔を綻ばせた。
「早く食べてみたいね。」
「……そうだね。」
私としてはちょっと複雑な想いだ。
このお米を作るのに、一体どのくらいの苦労があったのか、雅也にはきっとわかってないと思うから。
「ねぇ、今度はお米を作ってみない?」
うちで育てた野菜で作った料理は、私の両親にも雅也の両親にもすごく好評だった。
実った野菜は、見た目も味もスーパーで売ってるのと比べても遜色のない程の出来だった。
それは、偏に私の日々の努力のおかげだと思ってる。
雅也は、ほとんどなにもしてないんだから。
そりゃあ、三時間近くかけて毎日通勤してるのは気の毒だとは思うけど、田舎に住みたいって言い出したのは雅也だし、休みの日は疲れたって言って寝てばかりで、畑の事なんて何もしてくれなかったんだから。
なのに、今度は米?
そんなの無理無理!
「お米はさすがに無理でしょう。」
「それが無理じゃないんだ。
田んぼの貸し出しから、お米作りまで教えてくれる農家さんがいてね。
実は、もう頼んで来たんだ。」
「えーーーっ!?」
思った通り、今回も雅也はほとんどなにもしなかった。
田植えから、稲刈り…すべて私がやった。
田植えも稲刈りも、全部人力だから、腰が折れるんじゃないかって思うくらいの重労働だった。
農家さんは親切なおじさんで、なにもわからない私にとても丁寧に教えてはくれたけど…
なんで、私、こんなことやってるんだろう!?って、何度も思ったよ…
これもすべては雅也のせいなんだ!
刈り取った稲を天日干ししてから…
ようやく雅也が手伝うと言い出した。
三連休の日のことだ。
借りて来た脱穀機で、稲を脱穀する。
脱穀なんて、今までの作業に比べものにならないくらい楽な作業だから、雅也は遊びみたいににこにこしながらやっている。
「たくさん出来たね!」
「そうだね。」
「あぁ、これが収穫の喜びってやつか!」
雅也の言葉にイラっとしながらも、奥歯を噛み締めて私は微笑む。
なにもしてないくせに、何が収穫の喜びだ!
「私がどれだけ苦労して来たか、お前はわかってるのか~!」と、心の中でシャウトした。
*
「とってもおいしいね。」
「……うん。」
自分で作ったお米を食べていると、苦労の日々が思い出されて胸がいっぱいになった。
「こんなにおいしいご飯が食べられるのは、美里のおかげだね。」
「え?」
その一言で、今までの苦労が報われたような気がした。
あぁ、私ってなんて単純な女なんだろう。
今日のごはんはちょっとしょっぱいけど、最高の味だ。
来年もまた米を作ろうと…私は心の中でそんなことを思っていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜
青空ばらみ
ファンタジー
一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。
小説家になろう様でも投稿をしております。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
ショートショートのお茶漬け
rara33
現代文学
お茶漬けのようにサラサラと気軽に楽しめるような、基本5分以内で読めるショートショート集です。
原則一話完結ですが、次章に続く場合はその旨を章タイトルに明記します。
お好きな章からお気軽に読んでいただければ、本当に嬉しいです(^^)
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(追記) 毎日1話更新の予定です。
※他の投稿サイトにて本人名義で投稿した拙作を、適宜アレンジしたものです。
※小説家になろう様でも連載中ですが、アルファポリス様掲載分は、女性の読者様向けの作品をメインに投稿させていただくつもりです。
自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません
月野槐樹
ファンタジー
家族と一緒に初めて王都にやってきたソーマは、王都の光景に既視感を覚えた。自分が作ったゲームの世界に似ていると感じて、異世界に転生した事に気がつく。
自作ゲームの中で作った猫執事キャラのプティと再会。
やっぱり自作ゲームの世界かと思ったけど、なぜか全く作った覚えがない乙女ゲームのような展開が発生。
何がどうなっているか分からないまま、ソーマは、結構マイペースに、今日も魔道具制作を楽しむのであった。
第1章完結しました。
第2章スタートしています。
当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる