210 / 401
私のヒーロー
1
しおりを挟む
「やめて、やめて~!」
足元で大きな音でパンパンはねるネズミ花火に、私は耳を塞ぎ、わんわん泣いた。
「こらーっ!」
航くんが走ってきて、いたずら坊主たちを蹴散らし、ネズミ花火を踏みつけてくれた。
「千恵、もう大丈夫だぞ。」
そう言われても、私の涙はすぐには止まらない。
でも、航くんが来てくれた時、どれほど嬉しかったか。
航くんのまっすぐな瞳がどれほど心強かったことか。
考えてみたら、あれが私の初恋だったのかもしれない。
でも、航くんはお父さんの仕事の都合で、私が小5の時に引っ越して…
私は好きだと言うことさえ出来ないまま、初恋は儚く弾け飛んだ。
***
「わぁ、綺麗。」
ある夏の日、友達に誘われて、花火大会を見に行った。
でも、私は大人になっても大きな音のするものが苦手で。
だから、どうしようかと迷ったけれど、浴衣が着たくて、やっぱり行くことにした。
でも、花火を見に来たお客さん達からはうんと遠くの河原まで離れた。
そこだと、音もあまり怖くない。
一人で花火を見上げていた時…
「あれ~?けっこう可愛い子じゃん。」
「こんなところに一人でいたら危ないよ。」
ニヤニヤと笑いながら、二人の若い男が私に近付いて来る。
私は咄嗟に逃げようとしたけれど、慣れない下駄だから、すぐに追い付かれて…
「やめてください!」
「もしかして、襲われたくてこんなところにいたんじゃないの?」
「仕方ないなぁ。じゃあ、俺たちが可愛がってやるか。」
恐怖に体がすくんで動けない!
そんな私を男が押し倒す。
「や、やめて~!」
今夜は花火大会。
どんなに叫んでも聞こえるはずはないけど、私は死に物狂いで叫んだ。
「何やってんだ!」
ふと気付くと、若い男の人が、二人を相手に取っ組みあっていて…
私は怖さに何も出来ずに震えていた。
「畜生!覚えてやがれ!」
男の人はとても強くて、二人組の男はそんな捨て台詞を残して逃げていった。
「大丈夫?」
「あ、あ、ありが…とうござま、す。」
私は泣きながら、必死でお礼を言った。
「立てる?」
「は、はい。」
手を借りてなんとか立ち上がったけど、
足が震えてよろめいた。
「危ない!」
抱き寄せられた時、間近で見た瞳は真っ直ぐで…
「航くん…」
私は思わず、幼馴染の名前を口にしていた。
「え?……まさか、千恵?」
「えっ!?」
それは、まさに奇跡の再会だった。
足元で大きな音でパンパンはねるネズミ花火に、私は耳を塞ぎ、わんわん泣いた。
「こらーっ!」
航くんが走ってきて、いたずら坊主たちを蹴散らし、ネズミ花火を踏みつけてくれた。
「千恵、もう大丈夫だぞ。」
そう言われても、私の涙はすぐには止まらない。
でも、航くんが来てくれた時、どれほど嬉しかったか。
航くんのまっすぐな瞳がどれほど心強かったことか。
考えてみたら、あれが私の初恋だったのかもしれない。
でも、航くんはお父さんの仕事の都合で、私が小5の時に引っ越して…
私は好きだと言うことさえ出来ないまま、初恋は儚く弾け飛んだ。
***
「わぁ、綺麗。」
ある夏の日、友達に誘われて、花火大会を見に行った。
でも、私は大人になっても大きな音のするものが苦手で。
だから、どうしようかと迷ったけれど、浴衣が着たくて、やっぱり行くことにした。
でも、花火を見に来たお客さん達からはうんと遠くの河原まで離れた。
そこだと、音もあまり怖くない。
一人で花火を見上げていた時…
「あれ~?けっこう可愛い子じゃん。」
「こんなところに一人でいたら危ないよ。」
ニヤニヤと笑いながら、二人の若い男が私に近付いて来る。
私は咄嗟に逃げようとしたけれど、慣れない下駄だから、すぐに追い付かれて…
「やめてください!」
「もしかして、襲われたくてこんなところにいたんじゃないの?」
「仕方ないなぁ。じゃあ、俺たちが可愛がってやるか。」
恐怖に体がすくんで動けない!
そんな私を男が押し倒す。
「や、やめて~!」
今夜は花火大会。
どんなに叫んでも聞こえるはずはないけど、私は死に物狂いで叫んだ。
「何やってんだ!」
ふと気付くと、若い男の人が、二人を相手に取っ組みあっていて…
私は怖さに何も出来ずに震えていた。
「畜生!覚えてやがれ!」
男の人はとても強くて、二人組の男はそんな捨て台詞を残して逃げていった。
「大丈夫?」
「あ、あ、ありが…とうござま、す。」
私は泣きながら、必死でお礼を言った。
「立てる?」
「は、はい。」
手を借りてなんとか立ち上がったけど、
足が震えてよろめいた。
「危ない!」
抱き寄せられた時、間近で見た瞳は真っ直ぐで…
「航くん…」
私は思わず、幼馴染の名前を口にしていた。
「え?……まさか、千恵?」
「えっ!?」
それは、まさに奇跡の再会だった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。
石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません
俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。
本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。
幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。
そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。
彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。
それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』
今度もまた年上ヒロインです。
セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。
カクヨムにも投稿中です
転生王子はダラけたい
朝比奈 和
ファンタジー
大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。
束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!
と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!
ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!
ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり!
※2016年11月。第1巻
2017年 4月。第2巻
2017年 9月。第3巻
2017年12月。第4巻
2018年 3月。第5巻
2018年 8月。第6巻
2018年12月。第7巻
2019年 5月。第8巻
2019年10月。第9巻
2020年 6月。第10巻
2020年12月。第11巻 出版しました。
PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。
投稿継続中です。よろしくお願いします!
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
「要らない」と言われた花嫁は、王宮を変える黒幕になるそうです
昼から山猫
ファンタジー
伯爵令嬢ロザリンは、幼少期から王子の花嫁候補として育てられたが、いざ婚約が決まった矢先に「飽きた」という理由で破棄される。怒りと悲しみで半狂乱になりかけたが、周囲の冷淡な態度を見て気づく。自分はただ「王子の飾り」として利用されていただけで、真に味方と呼べる人はほとんどいない、と。
ならば、表向きは大人しく消えたフリをして、裏で思う存分やり返してやろう――。ロザリンは一念発起し、ずっと見下されてきたことで培った洞察力を駆使して、王宮内の不正や腐敗をひそかに洗い出す作業を開始。彼女は膨大な資料や使用人の噂話をまとめ、政治の流れを自在に動かせるような裏ルートを開拓していく。そして、無能と呼ばれたはずの令嬢が、実は王宮の暗部を握る最重要人物となるのだ。
王子は新たな恋人を得た気分で浮かれているが、政局は彼の知らぬところで動き始める。ロザリンは静かに微笑み、彼女を切り捨てた一族や王子をじわじわと追い詰める算段を練えていく。表舞台から姿を消したはずの“元・婚約者”が、どうやって復讐を果たすのか――やがて、王子は震えることになる。
妹とそんなに比べるのでしたら、婚約を交代したらどうですか?
慶光
ファンタジー
ローラはいつも婚約者のホルムズから、妹のレイラと比較されて来た。婚約してからずっとだ。
頭にきたローラは、そんなに妹のことが好きなら、そちらと婚約したらどうかと彼に告げる。
画してローラは自由の身になった。
ただし……ホルムズと妹レイラとの婚約が上手くいくわけはなかったのだが……。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
リセット
桐条京介
青春
六十余年の人生に疲れた男が、ひょんなことから手に入れたのは過去へ戻れるスイッチだった。
過去に戻って、自らの人生をやり直す男が辿り着くゴールは至上の幸福か、それとも――
※この作品は、小説家になろう他でも公開している重複投稿作品になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる