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私のヒーロー
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「やめて、やめて~!」
足元で大きな音でパンパンはねるネズミ花火に、私は耳を塞ぎ、わんわん泣いた。
「こらーっ!」
航くんが走ってきて、いたずら坊主たちを蹴散らし、ネズミ花火を踏みつけてくれた。
「千恵、もう大丈夫だぞ。」
そう言われても、私の涙はすぐには止まらない。
でも、航くんが来てくれた時、どれほど嬉しかったか。
航くんのまっすぐな瞳がどれほど心強かったことか。
考えてみたら、あれが私の初恋だったのかもしれない。
でも、航くんはお父さんの仕事の都合で、私が小5の時に引っ越して…
私は好きだと言うことさえ出来ないまま、初恋は儚く弾け飛んだ。
***
「わぁ、綺麗。」
ある夏の日、友達に誘われて、花火大会を見に行った。
でも、私は大人になっても大きな音のするものが苦手で。
だから、どうしようかと迷ったけれど、浴衣が着たくて、やっぱり行くことにした。
でも、花火を見に来たお客さん達からはうんと遠くの河原まで離れた。
そこだと、音もあまり怖くない。
一人で花火を見上げていた時…
「あれ~?けっこう可愛い子じゃん。」
「こんなところに一人でいたら危ないよ。」
ニヤニヤと笑いながら、二人の若い男が私に近付いて来る。
私は咄嗟に逃げようとしたけれど、慣れない下駄だから、すぐに追い付かれて…
「やめてください!」
「もしかして、襲われたくてこんなところにいたんじゃないの?」
「仕方ないなぁ。じゃあ、俺たちが可愛がってやるか。」
恐怖に体がすくんで動けない!
そんな私を男が押し倒す。
「や、やめて~!」
今夜は花火大会。
どんなに叫んでも聞こえるはずはないけど、私は死に物狂いで叫んだ。
「何やってんだ!」
ふと気付くと、若い男の人が、二人を相手に取っ組みあっていて…
私は怖さに何も出来ずに震えていた。
「畜生!覚えてやがれ!」
男の人はとても強くて、二人組の男はそんな捨て台詞を残して逃げていった。
「大丈夫?」
「あ、あ、ありが…とうござま、す。」
私は泣きながら、必死でお礼を言った。
「立てる?」
「は、はい。」
手を借りてなんとか立ち上がったけど、
足が震えてよろめいた。
「危ない!」
抱き寄せられた時、間近で見た瞳は真っ直ぐで…
「航くん…」
私は思わず、幼馴染の名前を口にしていた。
「え?……まさか、千恵?」
「えっ!?」
それは、まさに奇跡の再会だった。
足元で大きな音でパンパンはねるネズミ花火に、私は耳を塞ぎ、わんわん泣いた。
「こらーっ!」
航くんが走ってきて、いたずら坊主たちを蹴散らし、ネズミ花火を踏みつけてくれた。
「千恵、もう大丈夫だぞ。」
そう言われても、私の涙はすぐには止まらない。
でも、航くんが来てくれた時、どれほど嬉しかったか。
航くんのまっすぐな瞳がどれほど心強かったことか。
考えてみたら、あれが私の初恋だったのかもしれない。
でも、航くんはお父さんの仕事の都合で、私が小5の時に引っ越して…
私は好きだと言うことさえ出来ないまま、初恋は儚く弾け飛んだ。
***
「わぁ、綺麗。」
ある夏の日、友達に誘われて、花火大会を見に行った。
でも、私は大人になっても大きな音のするものが苦手で。
だから、どうしようかと迷ったけれど、浴衣が着たくて、やっぱり行くことにした。
でも、花火を見に来たお客さん達からはうんと遠くの河原まで離れた。
そこだと、音もあまり怖くない。
一人で花火を見上げていた時…
「あれ~?けっこう可愛い子じゃん。」
「こんなところに一人でいたら危ないよ。」
ニヤニヤと笑いながら、二人の若い男が私に近付いて来る。
私は咄嗟に逃げようとしたけれど、慣れない下駄だから、すぐに追い付かれて…
「やめてください!」
「もしかして、襲われたくてこんなところにいたんじゃないの?」
「仕方ないなぁ。じゃあ、俺たちが可愛がってやるか。」
恐怖に体がすくんで動けない!
そんな私を男が押し倒す。
「や、やめて~!」
今夜は花火大会。
どんなに叫んでも聞こえるはずはないけど、私は死に物狂いで叫んだ。
「何やってんだ!」
ふと気付くと、若い男の人が、二人を相手に取っ組みあっていて…
私は怖さに何も出来ずに震えていた。
「畜生!覚えてやがれ!」
男の人はとても強くて、二人組の男はそんな捨て台詞を残して逃げていった。
「大丈夫?」
「あ、あ、ありが…とうござま、す。」
私は泣きながら、必死でお礼を言った。
「立てる?」
「は、はい。」
手を借りてなんとか立ち上がったけど、
足が震えてよろめいた。
「危ない!」
抱き寄せられた時、間近で見た瞳は真っ直ぐで…
「航くん…」
私は思わず、幼馴染の名前を口にしていた。
「え?……まさか、千恵?」
「えっ!?」
それは、まさに奇跡の再会だった。
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