上 下
178 / 401
美味しいおかず

しおりを挟む
(あぁ、いやだ…)



 明日は、子供の運動会。
 最近では、秋ではなく今頃に開催されることが多くなった。
なんでも、5月は晴れの日が多いからだとか、ゴールデンウィーク中は保護者も来やすいからということらしいけど…



とりあえず、料理が苦手な私にとって、運動会は最高にいやなイベントだ。
 家族と一緒に食べるお弁当は、運動会の中でも重要な役割だ。
だから、いやだとか苦手だとか言ってられないのだけど、でも、苦手なものは苦手なんだから仕方がない。



 「お母さん、運動会の日の5月2日は八十八夜なんだって。
 八十八夜って何?」

 「え?」



 何?八十八夜…??



 「え…っと。
 茶摘みを始める日よ。
そんなことより幸人、早く宿題しなさいよ!」

 良くわからないから、適当なことを言って誤魔化した。
 息子は不満そうな顔をしながらも、リビングから離れ、自分の部屋に向かった。



 (八十八夜って、一体、何?)



 昨年は近くに住んでる母に頼んで作ってもらったけど、今年、母はお友達と旅行に行ってしまった。
だから、お弁当は自分で作るしかない。
そう思うだけで、気も全身も鉛のように重くなる。



 *



 「お母さん…このお弁当、お母さんが作ったでしょ?」

 「え?なんで?」

 「うん、なんとなく…」



きっと、息子は気を遣ったのだ。
 何となくも何も、この酷い出来栄えを見ればすぐにわかる。
でも、見た目がなによ!料理は味よ…!
……とも、言えない。



 息子はあれこれつまんでは、微妙な顔をして食べている。
 私も一つ食べてみた。
 食べられないって程ではなかったけど、お世辞にも美味しいとは言えない。
そのことは味見をした時点でわかってはいたけれど…



「あ、これ、美味しい…!」



 息子は、タケノコの含め煮を食べて、笑顔になった。



 「お母さん、これ、本当に美味しいよ!
すごく良い味してるよ!」

 「そ、そう…?」



それは、お隣からお裾分けでもらったものだとは、私にはとても言えなかった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

《戦》いの《鳥》と《少女》たちは二つの世界を舞う

たくみ
ファンタジー
突如現れた異形の怪物達に襲われた王国。 抵抗空しく、最後の時を迎えようとする王国と命運を共にしようとする王女。 だが、王宮に仕える魔法使いに導かれ王女は異世界へと逃れる。 時と場所は変わって現代の日本。 毎夜不思議な夢を見るようになった少女は、肉親に起こったとある変化をきっかけにその運命を大きくかえる事になる。

メルレールの英雄-クオン編-前編

朱璃 翼
ファンタジー
月神を失って3000年ーー魂は巡り蘇る。 失われた月神の魂は再び戻り、世界の危機に覚醒するだろう。 バルスデ王国の最年少騎士団長クオン・メイ・シリウスはある日、不思議な夢を見るようになる。次第に夢は苦しめる存在となりーーーー。 ※ノベルアップ+、小説家になろう、カクヨム同時掲載。

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

渡邊 香梨
ファンタジー
コミックシーモア電子コミック大賞2025ノミネート! 11/30まで投票宜しくお願いします……!m(_ _)m ――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】 12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます! 双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。 召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。 国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。 妹のお守りは、もうごめん――。 全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。 「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」 内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。 ※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。 【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】

ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ

京衛武百十
ファンタジー
人の気配が途絶えた世界を、二つの人影が歩いていた。それはどちらも十二歳くらいの少女に見えた。しかし片方はよく見ると人間でないことが分かる。人間に似た外見とメイドを模したデザインを与えられたロボットだった。 ロボットの名前はリリアテレサ。もう一人の少女の名前はリリア・ツヴァイ。 映画に出てくる<ゾンビ>のような動く死体がたまにうろついているその世界で、ロボ娘と少女は当てのない旅を続けるのだった。

処理中です...