168 / 401
三枚目
1
しおりを挟む
「ねぇ…何やってんの?」
「気にしないで…」
「気になるよ。」
厚子は、不機嫌にそう言った。
舞い散る桜の花びらを、三枚続けて掴むことが出来たら、恋が成就する…
そんなのただのつまらないおまじない。
そう思っても、つい頑張って花びらを掴もうとしてしまうのは…好きな人がいるから。
(あと一枚…!)
ひらりひらひら…
舞い落ちる花びらは、あと少しというところで、私の指をすり抜けた。
まただ…
いつも、何とか掴めるのは二枚止まり。
最後の一枚は、なかなか掴めない。
それは、やっぱり私の好きな人が高望み過ぎるからか…
一つ年上の生徒会長。
学校中の生徒が彼のことを知ってると思う。
それに引き換え、私は何の取り柄もないただの女子中学生。
生徒会長は、アイドルと同じくらいに遠い存在。
(そうだよね…無理だよね…)
掴めない花びらのせいにして、彼への想いを断ち切った。
高校生になり、大学生になっても、私は舞い散る桜の花びらを必死で取ろうとした。
だけど、やっぱり三枚続けては取れなくて、私は、その都度、桜の花びらを言い訳に、その恋を諦めた。
*
社会人になり、何年かが過ぎた。
桜の季節になっても、もう花びらを掴もうとすることはなくなった。
そんなのは、何の根拠もないただのおまじないだとわかる年になったのだ。
「ちょっと、トイレに行って来ます。」
職場の花見…
そういうのは苦手だけれど、行かないというわけにもいかない。
私は大人数で騒ぐことは苦手だし、お酒にも弱いから。
なんだかんだと理由を付けては、その場から離れた。
ふと見ると、同じ職場の奥園さんが、桜の木の下で桜を見上げていた。
その顔があまりにも真剣だったから、私はつい立ち止まり、奥園さんの様子に見入ってしまった。
その時、花びらが音もなく散って…
奥園さんは、その花びらを優雅な仕草で掴んだ。
「あっ!」
思わず上げた声に、奥園さんが私に気付いた。
「吉井さん!」
奥園さんが私の所に走って来る。
「あ、あの……」
「吉井さん!」
「は、はい。」
「僕と付き合って下さい!」
「……え?」
奥園さんは、照れくさそうな顔で手の平を差し出した。
そこには、三枚の花びらが…
「友達からでも良いんです。
きっと、僕達、うまくいきます。
どうかよろしくお願いします。」
正直言って、奥園さんに特別な感情は持ってなかったし、とにかく驚いただけなのだけど…
「は、はい…私で良ければ…」
私はそう返事をしてしまっていた。
「あ…あぁっ!ありがとうございます!」
私もそう思う。
だって、花びらを三枚掴めたんだもの…
きっと、私達はうまくいく……
「気にしないで…」
「気になるよ。」
厚子は、不機嫌にそう言った。
舞い散る桜の花びらを、三枚続けて掴むことが出来たら、恋が成就する…
そんなのただのつまらないおまじない。
そう思っても、つい頑張って花びらを掴もうとしてしまうのは…好きな人がいるから。
(あと一枚…!)
ひらりひらひら…
舞い落ちる花びらは、あと少しというところで、私の指をすり抜けた。
まただ…
いつも、何とか掴めるのは二枚止まり。
最後の一枚は、なかなか掴めない。
それは、やっぱり私の好きな人が高望み過ぎるからか…
一つ年上の生徒会長。
学校中の生徒が彼のことを知ってると思う。
それに引き換え、私は何の取り柄もないただの女子中学生。
生徒会長は、アイドルと同じくらいに遠い存在。
(そうだよね…無理だよね…)
掴めない花びらのせいにして、彼への想いを断ち切った。
高校生になり、大学生になっても、私は舞い散る桜の花びらを必死で取ろうとした。
だけど、やっぱり三枚続けては取れなくて、私は、その都度、桜の花びらを言い訳に、その恋を諦めた。
*
社会人になり、何年かが過ぎた。
桜の季節になっても、もう花びらを掴もうとすることはなくなった。
そんなのは、何の根拠もないただのおまじないだとわかる年になったのだ。
「ちょっと、トイレに行って来ます。」
職場の花見…
そういうのは苦手だけれど、行かないというわけにもいかない。
私は大人数で騒ぐことは苦手だし、お酒にも弱いから。
なんだかんだと理由を付けては、その場から離れた。
ふと見ると、同じ職場の奥園さんが、桜の木の下で桜を見上げていた。
その顔があまりにも真剣だったから、私はつい立ち止まり、奥園さんの様子に見入ってしまった。
その時、花びらが音もなく散って…
奥園さんは、その花びらを優雅な仕草で掴んだ。
「あっ!」
思わず上げた声に、奥園さんが私に気付いた。
「吉井さん!」
奥園さんが私の所に走って来る。
「あ、あの……」
「吉井さん!」
「は、はい。」
「僕と付き合って下さい!」
「……え?」
奥園さんは、照れくさそうな顔で手の平を差し出した。
そこには、三枚の花びらが…
「友達からでも良いんです。
きっと、僕達、うまくいきます。
どうかよろしくお願いします。」
正直言って、奥園さんに特別な感情は持ってなかったし、とにかく驚いただけなのだけど…
「は、はい…私で良ければ…」
私はそう返事をしてしまっていた。
「あ…あぁっ!ありがとうございます!」
私もそう思う。
だって、花びらを三枚掴めたんだもの…
きっと、私達はうまくいく……
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
月夜の小鳥は哀切な嘘をつく【本編完結。アナザーストーリー連載中★】
山葵トロ
BL
「俺とお前は、この先、ずっと一緒には居られない 」
Ω《オメガ》の真祝《まほぎ》の心の総てを掴んでいる男は、幼馴染みのβ《ベータ》の二海人《ふみと》。
けれど、ずっとずっと二海人だけで、涙が出る程好きで好きで堪らない真祝の想いに、二海人は決して応えてはくれない。
何度求めても跳ね返される想いに心は磨り減りそうになりながら、しかし応えてはくれないと分かっていても好きなことは止められない。
そんな時、真祝の前に現れたα《アルファ》の央翔《おうしょう》。 「真祝さん、俺の番《つがい》になってよ 」ーーーーー。
やっと会えた『運命の番 』だと、素直に気持ちをぶつけてくる央翔に、真祝は……。
◆R-18表現には、※を付けてあります。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
※コミカライズ進行中。
なんか気が付いたら目の前に神様がいた。
異世界に転生させる相手を間違えたらしい。
元の世界に戻れないと謝罪を受けたが、
代わりにどんなものでも手に入るスキルと、
どんな食材かを理解するスキルと、
まだ見ぬレシピを知るスキルの、
3つの力を付与された。
うまい飯さえ食えればそれでいい。
なんか世界の危機らしいが、俺には関係ない。
今日も楽しくぼっち飯。
──の筈が、飯にありつこうとする奴らが集まってきて、なんだか騒がしい。
やかましい。
食わせてやるから、黙って俺の飯を食え。
貰った体が、どうやら勇者様に与える筈のものだったことが分かってきたが、俺には戦う能力なんてないし、そのつもりもない。
前世同様、野菜を育てて、たまに狩猟をして、釣りを楽しんでのんびり暮らす。
最近は精霊の子株を我が子として、親バカ育児奮闘中。
更新頻度……深夜に突然うまいものが食いたくなったら。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
【完結済み】俺の番は15歳。 (狼なんて可愛いわんちゃん)
BBやっこ
恋愛
ロード→セリ→カナンの視点で展開されるエロストーリー?
には、ならなかった。15歳への手の出しづらさよ。
世界観はカクヨム様なろう様で連載中の『捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?』
『もふもふ日誌【極北の城<報告書>】』連載中の、3年後の世界線。
12歳で番と出会ってから我慢した竜人
竜人の番の女の子、成人は16歳
その2人を守る狼、実は獣人の男
3話連続で、週一ペースを目指してます。
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる