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パランのベッド

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「ねぇねぇ、どうかな?」

 「うん……可愛いんじゃない?」

 「でしょ、でしょ?
 絶対に可愛いよね?」

 亜紀は、俺の答えに満足したようだ。



 確かに、可愛いって言ったのは嘘じゃない。
 今日の作品は、廃タイヤを使ったパランのベッドだそうだ。
タイヤを目をむくような鮮やかなピンクに塗り、その上にはにんじんの柄が描かれている。
 個性的なものではあるが、とりあえず、若い女の子が好きそうな雰囲気には仕上がっている。



そう、亜紀の趣味はD.I.Y.
特に、廃材を使ったD.I.Y.にハマっている。
そのおかげで、うちの物置には亜紀がどこかで拾い集めて来たがらくたが押し込められ、部屋の中には廃材から生まれ変わった亜紀の作品が所狭しと並んでいる。



 「パラン、あんたの寝床が出来たよ。
すっごく可愛いからうれちいでちゅね~」



そう言いながら、亜紀はパランを抱きかかえ、タイヤの真ん中に座らせた。
パランは見慣れないものに、どこか怯えているような様子だ。
 鼻をひくひくと動かしている。



 「あんまり気にいってないみたいだな。」

 「違うわ、気に入ってるのよ。ねぇ、パラン?」

パランは長い耳をぴんと伸ばし、ベッドから飛び出した。



 「ほら、やっぱり気に入らなかったんだ。」

 「そんなことないってば!
きっとまだ眠くないだけよ。」

 亜紀は負けず嫌いだ。
もしかしたら、鼻の良いパランには、ペンキのにおいがきつすぎたのかもしれないと思ったが、これ以上は何も言わない方が良さそうだ。



 「このにんじんの柄、なかなか良い感じだな?
 亜紀はセンスが良いからな。」

 「えへへ…これ、私もけっこう気に入ってるんだ。」

 「うん、本当に良いと思うよ。」

 亜紀は機嫌を直し、にこにこと笑っている。
 嘘というわけではない。
ただ、ちょっと大げさに言ってみただけ。
これくらいのことが言えなくては、夫婦関係はうまくいかない。


その後、結局、パランはそのベッドに寝ることはなかったが、猫のシャルルが気に入って良く寝るようになった。

 
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